人と体験を起点とした建築を基軸に、 「歓びと感動」を事業者とともに創出
乃村工藝社 ビジネスプロデュース本部 建築プロデュース部
多様化する社会課題を独自の視点で解決
空間創造のプロフェッショナルとして、社会の新たな価値創造に貢献してきた乃村工藝社。2021年、従来の事業領域で培ってきたアイデアと提案力で、多様化する社会課題の解決を目指す「ビジネスプロデュース本部」が発足。さらに、24年3月には中期経営計画において打ち出した〝建築領域の事業拡大〞を見据え、同本部の下に「建築プロデュース部」が誕生した。
建物や空間の価値最大化は民間企業のみならず公共団体にも共通する課題である。特に近年、既存施設の新たな用途を考案し、資産価値を高める取り組みも増えてきた。同部では、建築の領域に得意とするインフィル側からの視点でアプローチする、〝建築を含めた最適解〞の提供をスタートさせている。
「乃村工藝社が大切にしてきたのは、〝人と体験〞を起点とした空間創造です。創業以来、人々に〝歓びと感動〞をもたらす内装・展示の在り方を模索してきました。今後は、建築と内装の間をつなぐ新たな価値を生み出し、広く街と社会全体に貢献できるよう、ビジネスの領域をさらに広げていきます」と同部部長の山口誠二氏は語る。
従来同社では、構想段階からかかわった案件であっても、一旦は建築設計会社やゼネコンにプロジェクトを引き継ぎ、内装段階で再び関与するというリレー方式の取り組みが多かった。しかし今後は、プロジェクト全体を同社が一貫してプロデュースすることで、これまで以上の付加価値を生み出す提案を増やしていく計画だ。
その象徴的な事例となったのが、「東京ミズマチ®」である。浅草と東京スカイツリーを結ぶ東武鉄道の高架下敷地を有効利用するため、約650mにわたる複合商業施設を提案。建築プロデュース部の前身となる部署が最上流の建築企画を担当。それを受けてクリエイティブチームがデザインを進めると同時に、リーシングリレーション部が最適と思われるテナントを誘致。テナント側の要望も積極的に設計に取り入れることで、生き生きとした街並みを生み出すことに成功した。
「事業者様からの相談内容の変化を感じています。人々のニーズが多様化するなか、『土地や物件の使い道をどうすればよいか?』といった抽象的な相談も増えました。そんな難問に対しても、乃村ならではの提案を行い、納得いただいています」と山口氏は語る。
公民連携事業に、事業者としても参画
一方で、公民連携事業にも積極的にアプローチする。公園再整備にかかる活性化事業の千里中央公園「1OOORE SCENES(センリシーンズ)」では、近畿圏を中心に百貨店事業などを展開するエイチ・ツー・オーリテイリングに企画を持ち込み、公募参加につなげた。静岡市のPFI事業「静岡市海洋・地球総合ミュージアム整備運営事業(仮称)」においては、同社初となるコンソーシアム代表企業を務める。
「建築領域で事業の柱をつくることが目指すゴールです。建築設計だけでなく施工や運営もトータルにプロデュースする案件を増やすとともに、事業参画によるプロジェクト創出によって、会社にも社会にも大きなインパクトを生み出せると確信しています」
今年度から本格始動した同部だが、すでに20件以上のプロジェクトが進行中であり、ほか10件以上のコンサル案件を抱えているという。もちろん、内装・展示を基軸とした従前のクライアントからの相談も多い。「社全体で〝実直なパートナー〞として取り組んできたことが、事業者様の信頼を獲得してきたと思っています。クオリティだけでなく、工期やコスト、集客・収益性にも責任を持って総合プロデュースを果たす。それが我々の使命。今後も領域を拡大しながら、社会に新たな価値を創出し続けていきます」
- 山口誠二
ビジネスプロデュース本部
第二統括部 統括部長
兼 建築プロデュース部 部長やまぐち・せいじ/1994年、熊本大学大学院工学研究科建築専攻修了後、
佐藤工業株式会社入社。設計本部、シンガポール駐在を経て、
2002年に帰国後、株式会社乃村工藝社に入社。
プロジェクトマネージャーとして大規模商業施設の立ち上げ、
企業ミュージアムの企画設計に18年間携わり、20年より現職。
スターバックスリザーブ®ロースタリー東京、神田明神文化交流館など、
唯一無二の施設開発・空間づくりを牽引。一級建築士。
- 株式会社乃村工藝社
所在地/東京都港区台場2-3-4
https://www.nomurakougei.co.jp/
1892年(明治25年)創業。商業施設、ホテル、オフィス、
博物館・美術館、ショールームなどの展示、博覧会・イベ
ントなどプロモーションまで手がける空間の総合プロデュース企業。