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C&Rグループの総合力を活用し、 福島県・大熊中央産業拠点に、 “6次化農業複合施設”を建築

C&Rグループの総合力を活用し、 福島県・大熊中央産業拠点に、 “6次化農業複合施設”を建築

クリーク・アンド・リバー社 建築グループ プロデュースディビジョンの取り組み

 東日本大震災の福島第一原発事故で全町避難を経験し、農地を放棄せざるを得ない状態が続いていた福島県大熊町に、〝農業〞と〝食〞をテーマに据えた複合施設「FUN EAT MAKERS in Okuma」の立地が決まった。町と協定を結び、その運営に携わるのは、クリーク・アンド・リバー社(C&R社)のアグリカルチャー分野の子会社、コネクトアラウンドである。「つくる・たべる・であう」という事業コンセプトの策定や建物の設計を含め、実現に向けては、C&R社がグループの総力を結集している。同プロジェクトに直接かかわる浅井司(コネクトアラウンド社長)、青木大輔氏(一級建築士、デザイナー)、松葉力(C&R社建築グループプロデュースディビジョン建築プロデューサー)に、その取り組みについて聞いた。

〝農業〞と〝食〞で震災からの再生に貢献
コネクトアラウンドは、農業生産における新技術とC&Rグループがネットワークする異業種プロフェッショナルのノウハウ、アイデアを融合させた新たな農業ビジネスの構築を目的に、2022年4月に設立された。23年2月には、川崎市中原区に6次化農業(農業者〈1次産業〉が、加工〈2次産業〉や販売など〈3次産業〉も行うことで、付加価値を高める取り組み)事業を展開する「FUN EAT MAKERS 武蔵新城」を開設し、生産した野菜の直販や、それを活用した企業向けランチボックスの提供などを始めている。

「in Okuma」は、それに続くプロジェクトとなるのだが、本格的な復興に動き出した地域・福島県大熊町への〝進出〞だけに、その持つ意味は、川崎の案件とは異なる。

「ただ農業関連施設をつくるのではなく、そこで収穫した食材を使った食事を楽しむ場所なども設け、同時に仕事やイベント、様々な体験を通じて地元と交流できる環境づくりを構想しました。この場所にたくさんの人を連れてきて、大熊町と出合い、つながってもらうことで、農業の振興と賑わいの再生を実現しよう、というのが私たちの目指しているビジョンです」

大熊町での事業をそう説明する浅井は、「農業だけの会社であれば、それは難しかったかもしれない」と言う。

「C&R社が建築、エンタメ、シェフ、ファッション、その他もろもろのプロフェッショナルと連携しているからこそ、彼らを巻き込みつつノウハウを結集すれば、そういう場がつくれるのではないか、と考えました」

オープン後には、「いろんな分野のクリエイターたちに、半分農業・半分仕事、あるいはワーケーションのようなかたちで現地に来てもらう」ことも想定している。「近くにはインキュベーションセンターもできましたし、彼らが働くための環境は十分。感性に優れたクリエイターならば、そうした試みを通じて、既存のネット情報とは違う大熊町の姿を情報発信してくれるはず。現地で、さらに多くの人を集めるアイデアも提供してくれるだろう、と期待しています」。

C&Rグループの事業は8領域、18分野

C&Rグループは、1990年の設立以来、上記の18分野で活躍するプロフェッショナル39万人超を対象に、ライツマネジメント事業(知的財産の企画開発・流通)、プロデュース事業(開発・請負)、エージェンシー事業(派遣・紹介)を通じて、プロフェッショナルが持てる力を最大限に発揮できる環境を提供している

ちなみに22年6月に特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、中心地の駅前周辺の再開発も進む大熊町には、すでに全国から多くの若い世代が集まり、復興活動に参加しているという。「ある意味、すべてを失ったまちがゼロから再生していく姿をその目で見られ、もちろんそこに加わることもできる。どんな分野のプロフェッショナルであっても、ここに来れば得るものは大きいと思います」と浅井は語る。


ここに何があるべきかから考えた施設のかたち
新たな施設の敷地面積は、約1万4000㎡。建物としては、リーフ野菜の植物工場と、AIを活用した管理システムを導入したミニトマトのハウス栽培を行う「生産エリア」のほか、「食を楽しむエリア」「ワーケーションエリア」が設けられる。これに緑地広場と後述する「ノキシタ」で構成される「大熊町と様々な人がつながるエリア」、地元の野山をイメージした「大熊町の自然の景色とつながるエリア」を加えた5つのエリアで構成されており、25年春の開業を予定している。

このプロジェクトに当初から浅井と二人三脚で取り組んできたのが、川崎の施設「FUN EAT MAKERS 武蔵新城」のプランニングや設計も担った青木氏だ。「ほぼ決まったものの図面を引くのではなく、ブランドをつくるところからかかわるのが、設計士としての自分の立ち位置」と語る。

「この案件に関しても、〝そこにどんなものが必要なのか〞を検討するところから始めました。復興事業ですから、持続可能な農業ビジネスを展開し、雇用を生めばOK、という考え方もあるでしょう。でも、議論を重ねるなかで、それは違うだろう、と。浅井さんの話にもあった〝人を集める、人を戻す〞ことが我々に課せられたミッション、ということを再確認し、それを実現できるビジョンを考えました。行きついたのが、私有地でありながら、多くの人に解放された建物やスペースからなる複合施設です。本来工場が誘致される産業拠点に、広い芝生広場をつくるのも、そのためです」

建築コンセプト

「FUN EAT MAKERSi n Okuma」の事業コンセプトは、様々な人が農業にかかわり(つくる)、その食材を使ったおいしい食事を楽しみ(たべる)、仕事・イベント・体験を通じて、たくさんの人が大熊町とつながる(であう)。それを体現する複合施設は、①ユニバーサルワークフローを導入したリーフ生産の植物工場と、最新鋭の管理システムを導入した「高付加価値農業生産エリア」、②そこで生産された食材も使った、健康的でおいしい食事を提供する「食を楽しむエリア」、③異業種プロフェッショナルと農業の出合いの実現の場を提供する「様々なプロフェッショナルがつながるワーケーションエリア」、④緑地スペースなどを活用して食を中心としたイベントを開催できる「大熊町と様々な人がつながるエリア」、⑤地元の野山をイメージした植栽やビオトープなど、子供から大人まで憩える空間を設けた「大熊町の自然の景色とつながるエリア」――からなっている

知恵を絞り尽くしたのは、〝何が必要か〞だけではない。引き続き建物の設計に取り組んだ青木氏は言う。

「建築の視点からすると、トマトのハウスも植物工場もレストランもワーケーションエリアも、みんな別物。必要な面積や体積、設備がてんでバラバラなのです。それぞれについて適切な設計を行うのも大変ですが、そのままでは異質な建物が並んで建っているだけになってしまう。それは、多くの人がつながるというコンセプトからみても問題でした」

その課題を解消すべく、建物部分の設計に採用されたアイデアが「連なるノキシタ」だ。個々の建物を一つの屋根でつなぐことによって、外観的な一体感が醸成されるだけでなく、建物と建物の間に、人が往来し集うことのできる〝中間領域〞が生まれた。「屋根という大皿に、味わいの異なるエリアという料理を配したイメージ」(青木氏)というのは言い得て妙で、例えばレストランで食事をした人が、興味を惹かれて植物工場のエリアを訪れ、最新鋭のアグリテックに触れるような機会も増えるだろう。〝半屋外〞という特性は、来訪者と地元との交流を深めるイベント会場としてもうってつけだ。


登録建築士の成長に寄り添い、サポート
ところで、青木氏は、コネクトアラウンドの案件にかかわる前から、C&Rグループとの接点を持っていた。

「14年頃から設計、ブランディング、デザインディレクションなどの業務を継続的に受けています。今回の大熊町のプロジェクトが本格的な設計業務に移行した22年からは、建築グループの〝登録建築士〞としても、仕事をさせていただいているんですよ」

その登録建築士は、現在およそ1万人。様々なかたちで彼らをサポートする建築グループのプロデュース事業について、松葉はこう説明する。

「C&Rの建築グループは、一級建築士事務所でもあるのですが、一般的な設計事務所とは違います。単に外部のパートナーに仕事の仲介を行うというのとも違い、クリエイターにそのキャリアを存分に発揮できる仕事環境を提供する、という視点が我々のベースにはあります。例えば、独立して仕事をしたいと思っても、果たして仕事が取れるだろうか、と不安に思う人もいるでしょう。そういう場合には、我々がその能力にふさわしい案件を獲得するために、営業を受け持ちます。あくまでも一例ですが、そのように個々のクリエイターの状況に即したプロデュースを行うことで、プロとして活躍するお手伝いをするわけです」

付言しておけば、C&R社はグループの企業理念として、「プロフェッショナルの生涯価値の向上」を掲げている。そのミッションに則って、派遣や紹介のニーズに対応する〝エージェンシー〞のほか、説明したような〝プロデュース〞の事業を展開しているのだ。

「例えば設計士のなかには、自分の才能にまだ気づいていないようなケースもあると思うのです。あるいは、目指すところにどうやったらたどり着けるのか、見いだせないでいることも。そうしたところも含めて、その人の成長にずっと付き合うというのが、我々のスタンスです」と松葉は言う。

また、浅井は、「建築士の方から見ると、C&R社のなかに建築以外の様々な分野が存在し、プロジェクトが動いているというのも、大きな魅力だと思うのです。現に青木さんは、当社と出合ったことで、農業分野に足を踏み入れて、植物工場の設計にまで取り組むことになりました(笑)。建築士としての視野も活動の幅も、大きく広がったのではないでしょうか」と話す。

青木氏に、C&R社の登録建築士として働くメリットを語っていただこう。

「いろんなビジネスを考えている事業部や人と出会えるというのは、やはり大きなアドバンテージになると感じます。先ほど松葉さんがおっしゃったように、客観的な分析を踏まえて、ここが向いているとか、あえてこっちに飛び込んでみたら、といったアドバイスがもらえるのも、C&Rグループのいいところですね。自分の立ち位置を明確にするというのは、プロフェッショナルとして仕事をしていくうえで、とても大事なことだと思いますから」

PROFILE

本プロジェクトのメンバー
Member of the project


浅井 司/株式会社コネクトアラウンド 代表取締役社長
2001年、明治大学大学院農学研究科農芸化学専攻修了(施設園芸、養液栽培技術研究に従事)後、クリーク・アンド・リバー社入社。Web関連の人材派遣営業、アウトソーシング事業プロジェクトマネジメント、オープンイノベーション推進事業立ち上げなどに従事。22年、株式会社コネクトアラウンドへ出向、代表取締役社長就任。


青木大輔/株式会社NOTE 代表取締役
2010年、武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程デザイン専攻建築コース修了後、naf architect &design Inc.に入社。14年、NOTEを創業。22年、FUNEAT MAKERS事業立ち上げに伴いC&R社との設計業務を開始。23年、NOTEを法人化し、代表取締役就任。一級建築士。


松葉 力/株式会社クリーク・アンド・リバー社 建築グループ
1991年、芝浦工業大学大学院建設工学専攻修士課程修了後、株式会社武田光史建築デザイン事務所入所。
99年、tele-design collaborationnetwork設立に参画。
2002年、株式会社テレデザイン取締役。その後、株式会社リプラス、三菱地所ホーム株式会社などを経て、
15年、クリーク・アンド・リバー社入社。建築プロデューサー。

クリーク・アンド・リバー社 建築グループ プロデュースディビジョン

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TEL /0800-170-0091(フリーコール)
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