日本の建築業界のBIM化を促進、発展、けん引するコンサルティングチーム
ペーパレススタジオジャパン
「ひとことで言えば、建設業務の総合的なIT化。キーワードは3次元設計です」
同社の勝目高行代表取締役は、手描き、CADに続く作図手法として注目されつつあるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)について、そう説明する。
「従来は、施工者が図面を見ながら、どういう建物になるのか、ある意味想像力も働かせながら作業を進めました。しかし、2次元の図面から3次元を〝立ち上げる〞ためには専門知識が必要で、設計者の意図とズレることもしばしば。BIMによって一つの3次元モデルを共有してプロジェクトを進めていけば、こうした問題は起こりません。加えて、建築部材一つひとつに属性情報がインプットされているため、数量を拾い出して積算したり、竣工後のメンテナンスに利用したりすることも可能。設計段階で照明の状態や冷暖房負荷を検討し、コストダウンを図る、などという〝芸当〞もできるようになりました」
BIMを使えば、これまで不可能だった建築も可能になる。
「例えば、ザハ・ハディド氏デザインによる新国立競技場。あの複雑な形状は、BIMなしには再現できないんですよ」
ただし、世界的には広がりを見せているBIMも「日本での普及は非常に遅れていて、ようやく導入期を迎えたところ」だという。勝目氏以下14名の体制の同社は、その導入に向けたコンサルティングを主な業務としている。
「クライアントはゼネコンで、その企業に適合したソフトの提供、ネットワークの組み方などのほか、人材教育、必要に応じてスタッフの派遣も行います」
同様のBIMコンサルは、個人も含めてほかにも存在する。ただ、「親会社がIT企業のパイプドビッツであることが、当社の強みです」と勝目氏は言う。
「BIMは、ITのツールドパワーを十分に活用してこそ、メリットを生むことができます。常にネットを通じてデータを共有しながら仕事を進めますから、仮にそこに不具合が起これば、プロジェクト自体が止まってしまう。親会社には、そうした部分に長けた技術陣が200名以上いて、我々はそのリソースを活用することができるのです」
同社はまた、そうした企業向け導入コンサルのほか、独自にプロジェクトの直接支援も行っている。その一つが、世界有数の乗降者数を誇る駅再開発だ。
「地下を川が流れる地形で、駅に乗り入れる複数の鉄道路線を架け替えつつ高層ビルを建設するという、非常に複雑な工事。施工者が従来の図面で見ても、理解が難しい部分が多くあったでしょう。当社は地下構造まで3次元化し、誰でもわかる画像化を実現しました。それをもとに検討を重ねながら、作業を進めているのです」
ところで同社は今年5月、人材派遣のクリーク・アンド・リバー社、パソコン関連メーカーのデルなどと組んで、「JAPAN BIM化プロジェクト」をスタートさせた。
「コンサル、人材、コンピュータなど〝BIM環境〞の構築をワンストップでサポートすることで、世界を追い越す勢いを提供するのが目的です」
本格的な普及期を見据え、「将来的にはBIM専門の設計事務所を目指したい」と勝目氏は話す。求めるのは、「システムを活用して、いかにオリジナルな建物を設計していくか、そんな発想ができる人材」である。
- 勝目 高行
1970年、鹿児島県生まれ。
92年、東京理科大学建築学科卒業後、
メディアによる都市設計の具体的手法を求め、アトリエキュベルを主宰。
2006年、株式会社アダル施設プロジェクトにて、BIMの構築に向け活動開始。
09年11月、ペーパレススタジオジャパンを設立し、代表取締役に就任。
- ペーパレススタジオジャパン株式会社
所在地/東京都港区赤坂2-9-11オリックス赤坂2丁目ビル
TEL/03-5575-6643
http://www.paper-less-studio.com/
2009年11月、BIMによる建築プロジェクトのマネジメントを目的に設立。ゼネコンを中心とするBIMの導入コンサルタントを主力に、独自にプロジェクトのサポートも行う。
都内駅周辺再開発計画、国土交通省のBIM試行案件のサポートが進行中。
また、五洋建設BIM推進室とBIMの推進を目的に業務提携。
親会社はIT企業のパイプドビッツ(東証一部上場。株主比率80%)。