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多様な〝形ある資産〞の可能性を、 言語化・可視化し、最大価値へと導く

多様な〝形ある資産〞の可能性を、 言語化・可視化し、最大価値へと導く

日建設計 コモンズグループ の取り組み

2023年7月1日、日建設計の企画開発部門内に「コモンズグループ」が誕生し、その活動がスタートした。今回は、4つの部で構成された同グループの「プロセスデザイン部」「コマーシャルエクスペリエンス部」の両部を率いる穂積雄平氏に、コモンズグループのこれまでの軌跡、未来展望と求める人材像のお話をうかがった。

クライアントの思いを具現化するお手伝い

コモンズグループは、2023年7月1日、日建設計の企画開発部門内に発足。それまで活動していた「アクティビティデザイン」「パブリックアセット」「エモーションスケープ」の3つのラボを統合し、提供価値の強化を目的に再編成された。現在は、「プロセスデザイン」「コマーシャルエクスペリエンス」「パブリックアセット」「エモーションスケープ」の4つの部がそれぞれの専門性を生かし、業務を推進中だ。

プロセスデザイン部は、企業の目指す姿を実現するための行動プロセスに焦点を当てたコンサルティングを提供。コマーシャルエクスペリエンス部は、商業空間のデザインコンサルティングを担う。パブリックアセット部は、公共・都市空間における〝行動変容〞に向けたプロデュースを手がけ、エモーションスケープ部は、〝情動〞×〝場〞に着目した価値創出を目指している。 同グループの特徴は、プロジェクトの上流段階から関与する点にある。通常、同社ではプロジェクトが発生してから計画や設計を担うことが多いが、コモンズグループは構想・企画フェーズから参画し、クライアントの〝思い〞を言語化・可視化し、最大価値の創出を支援する。

掲げるミッションは、「ユーザーの行動・体験を軸としたプロジェクトの価値の最大化」だ。クライアントからは、しばしば「新たな取り組みを進めたいのだが、どのように具現化すればよいのか見えていない」といった相談が寄せられる。そこで同グループが、こうした〝難題〞をクライアントと一緒に考えて、プロジェクトを最適な方向へと導く役割を果たす。提示された条件を踏まえ、体験価値の向上に向けて最適と思われるプロセスを構築し、明確かつ具体性のあるビジョンを策定、共感してもらうことが重要だという。

「クライアントが何かを描こうとしているけれど、それが○なのか△なのか定まっていない段階からジョインし、最適な表現をともに模索していきます」と同グループのプロセスデザイン部兼コマーシャルエクスペリエンス部部長の穂積雄平氏は語る。

同グループがプロジェクトデザインを担い、方向性を定める際には、同社の設計部門をはじめとする他部門と連携することももちろんある。しかし、関与したプロジェクトが必ずしも同社の設計部門に移行するわけではなく、同グループが外部ブレーンとともにゴールまで進めていくケースも少なくない。

現在、コモンズグループがかかわるプロジェクトは、基本的に〝つくる〞ことが前提となっているが、今後は「つくるべきか、つくらぬべきか」といった、さらなる上流のコンサルティング領域にも積極的に関与していく考えだ。日建設計ならではの建築・都市に関する知見を生かし、クライアントの思いに寄り添いながら、環境配慮も含めた具体的計画を提案できるのが強みだ。単なる投資判断ではなく、空間を通じた最大限の価値創出を支援する点が不動産コンサルとの違いといえる。

「コモンズグループの特徴は『まだ見えていないものを言語化すること』、そして『絵に描いて関係者のイメージを可視化すること』にあります」と穂積氏は言う。関係者が多岐にわたる依頼案件が多く、そこでは堅固な共通認識を得ることが求められる。そのプロセスのなかで、言語化と可視化が意思決定を円滑にし、案件の方向性を明確にする重要な役割を果たしている。

プロセスデザイン部/「三井物産ワークプレイス」●現代の柔軟な働き方を踏まえ、企業本社の新しいあり方を提案。人と人の交流を促し、知的化学反応を加速させるオフィス空間として、3種類の共用スペースを設け、アクティビティに応じて使いこなすことで、柔軟で創造的な働き方を実現した

パブリックアセット部/「はじまりのいち」●三重県四日市市において、実際の道路空間における多種多彩な用途を試し、今後の道路空間の利用や運営のあり方を探る賑わい創出社会実験を開催。社会実験の企画・ディレクション、出店者とのコミュニケーション、広報戦略を担当した

コマーシャルエクスペリエンス部/「てつみち」●トリエ京王調布隣接の広場で6年間運用。地域イベントやパフォーマンスが行われ、多くの人々が集まった。無償の場所貸しや地域連携で人をつなぐ場として活用され、現在は「てつみち2」として新たな場所での運用が始まっている

コマーシャルエクスペリエンス部/「てつみち」●トリエ京王調布隣接の広場で6年間運用。地域イベントやパフォーマンスが行われ、多くの人々が集まった。無償の場所貸しや地域連携で人をつなぐ場として活用され、現在は「てつみち2」として新たな場所での運用が始まっている

体験価値向上を通じた価値創造のアプローチ

手がけたプロジェクトは、商業施設やオフィスにとどまらず、道路活用といった公共空間の活用にも広がっている。それらに対して同グループが提供してきたアプローチの一つに、〝行動変容〞がある。ただし、行動変容自体は最終目的ではなく、それはクライアントの思いを具現化する過程の一つに過ぎない。多様な戦略を通じて、商品や施設、場所など〝形ある資産〞を、プロジェクトの先にいる利用者がどのように活用するかをデザインすることが本質的な目的だ。

「単に場所や建物を設計し、人々の動きを誘導するのではなく、そこで生まれるであろう行動や体験、感情に思いを馳せながらプロジェクトを推進していきます。新たな場を創出し、人々が新しい行動を始める時の行動変容もそのプロセスのなかで生まれる一つの答え。あくまで手段の一つです。重要なのは、クライアントの目的を明確にし、よりよい価値を生み出し、新たに生まれた〝形〞が、すべてのステークホルダーの満足につながることだと考えています」

現在、同グループには約30名のメンバーが在籍しており、同社の設計部や都市デザイン部出身者を中心に、家具メーカーなど異業種からの転職者も増えている。さらに、今後はプロジェクト増加に伴うさらなる人材拡充も見込んでいる。

「新しい領域にチャレンジしたい建築人材にとって、非常に適した環境です。人々の行動を深く考え、未来への想像力を持って取り組める方にぜひ来ていただきたいと考えます」

今後の展望としては、国内のみならず、アジアをはじめとした海外市場にも視野を広げ、グローバルなプロジェクトへの挑戦を加速させる。これまで以上にクライアントの上流構想段階から価値を提供することで、日建設計の未来の可能性を広げていく――それがコモンズグループの使命である。

PROFILE

穂積雄平

穂積雄平
企画開発部門 コモンズグループ プロセスデザイン部長 コマーシャルエクスペリエンス部長

2002年、東京理科大学工学部建築学科卒業。07年、株式会社日建設
計入社。13年、発足メンバーとしてNikken Activity Design lab(NAD)
に所属する。多様なワークスタイルデザインに携わる。23年、コモンズグル
ープの立ち上げに参画し、現在に至る。「逃げ地図」、社内の新規事業推
進など活動は多岐にわたる。

株式会社日建設計

創業/1900年6月1日
所在地/東京都千代田区飯田橋2-18-3
https://www.nikken.jp

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