感動とホスピタリティを融合させた、最高の居心地を実現するデザイン
久米設計 設計本部 インテリア設計部
プロジェクトの初期段階から関与
同社にインテリア設計の部門が設けられたのは1960年のことだ。「大手設計事務所では、おそらく最も早かったはずです」と島村明良インテリア設計部統括部長は話す。
「まだ組織事務所がインテリアの重要性をそれほど認識していなかった時代でしょう。でも久米はこの時期に、建物単体だけでなく内装や家具など人の手に触れるものまですべて手がけていこうという方向性を、明確に定めたわけです」
以来、同部はホテルをはじめとするホスピタリティ産業に加え、商業施設や公共施設、オフィス、病院などへと徐々に守備範囲を広げてきた。2009年には海外事業の進展などもにらみ「インテリア設計部」に〝昇格〞、人員増も進めた。現在、16名だが建築設計部とタッグを組んで、設計に携わっている。建築物の種類ごとに「ざっくりとした役割分担」はあるが、必要に応じてチームに加わり目の前の案件に取り組む、柔軟な組織体制となっている。
部として〝独立〞しているとはいえ、建築本体や構造、設備の設計者と常に一体となってチームを組むのも「久米のインテリア設計」の特徴。ホテル、商業施設関連の仕事を束ねる中村嘉樹同部部長は、「通常のインテリア設計は、できたハコを渡されて、中をやってください、というパターン。でも久米は、基本的にそうした〝分業体制〞で仕事をしないのです」と語る。
「我々インテリア設計も、プロジェクトのマスタープランの段階から検討に加わらせてもらい、例えば駐車場計画はこうしよう、コテージタイプの旅館なら建物の配置計画はこれがいいのでは、といった議論から参加します。内装と外観や建築空間の一体感を確保するために、屋根の形状はこうしてくださいとか、こちらから建築の側に注文を出すことも、しばしばなんですよ」
同時に、「僕らは単なるデコレーターではありません。プランニングができて、建築も、構造、設備もわかる。そうであってこそ、人に見えるところ、人が触れる部分を最適なものにつくり上げることができ、組織事務所の久米設計のインテリア設計部だと考えています」と話す。
そうした仕事のやり方の根底を貫いているのは、「どうやったらその場に訪れた人が感動するストーリー性を演出できるか、いかにして中で働く人に機能的で楽しい空間を提供するか」という発想である。
各世代の優秀な人材を募集したい
現在、同部がかかわる仕事は「国内と海外が半々」となっている。比重の高まった海外は、09年以降、現地法人を構えたベトナム、中国の案件がメインだ。同部が設計した建物の一つが、昨年、ベトナム・ホーチミン市の中心街に竣工した、世界各国で高級ホテルチェーンを展開する仏アコーホテルズの、「プルマン・サイゴン・センター」である。
「外資の〝5つ星〞ホテルを丸ごと設計ができる事務所は、国内にそうはありません。実績を積んだことで、逆に日本国内や韓国などでの仕事に結びつく、という流れもできつつあります」と中村氏は言う。
目下の悩みは「手がける案件に比べ、まだまだ人員が不足気味なこと」だという。
「国内外ともに、さらに数多くの大きなプロジェクトにかかわっていくことになります。人材の確保は至上命題。個人的には、世代が偏ることなく、例えばプロジェクトを一人で回せる40代、どんどん外に出ていく30代、それをフォローアップできる20代、とバランスよく採用できるのが理想ですね」
求めるのは「建築がわかるインテリア設計者」。さらには、
「先ほども話したように、プロジェクトの初期の段階から現場に入って話し合いながら仕事を進めていくのが我々のやり方ですから、高いコミュニケーション能力、情報収集力も必要になると思います。そのうえで、特に海外でインテリア設計をやってみたいという意欲を持った方などは、大歓迎ですよ」と語ってくれた。
- 中村 嘉樹
1984年、千葉大学大学院室内計画研究室修了。
鹿島建設株式会社、カジマデザインヨーロッパ、株式会社イリアなどを経て、
2009年、久米設計へ。
B C S 賞、JCDデザイン賞奨励賞、日本照明賞奨励賞。
共著に『インテリアデザインを知る―初めて学ぶインテリア』(鹿島出版会)。
- 株式会社久米設計
所在地/東京都江東区潮見2-1-22
TEL/03-5632-7811
http://www.kumesekkei.co.jp/
1932年、欧州で建築を学んだ久米権九郎が創設(久米建築事務所)。その精神を受け継ぎ、「建築設計・監理」にとどまらず、
「各種マネジメント&ソリューション」「環境設備エンジニアリング」「構造エンジニアリング」を柱に、
事業のスタートから設計、施工後の運用まで一貫したサービスを展開している。
93年に現在地(東京都江東区潮見)に本社を移転。
2009年にベトナム、11年には中国に現地法人を設立し、アジアでの事業拡大にも注力している。