能力の高い“BIMママ”たちと共に、
クラウド×BIMの仕組みをフル活用し、
建設業界に新たな仕事環境を創出する
BIM systems
BIMを活用した建物3Dモデリング、建築設計図・施工図作成などを手がける同社。なかでも「ゼネコンなどから提供される施工計画を3D化し、施工のステップを見せる図面の依頼が多い」と城所秀樹代表。それは建築現場に大きな恩恵をもたらすものだ。
「2Dの施工計画図のみでは現場の意思疎通が十分とはいえず、人によって解釈がブレてしまいます。その点3Dモデリングは共通認識が取りやすい。また、施工手順を細かくシミュレーションすることによって、現場で計画図と3D画像を見ながら作業することでミスが軽減。結果、手戻りも少なくなって、現場がよりスムーズに回るというわけです」
城所氏とBIMとの出合いは2009年のこと。当時は鹿島建設に勤務しており、手書きで施工計画を書いていた。だが鹿島建設はBIM推進に舵を切る。城所氏も海外のモデリング会社を視察する機会に恵まれた。
「もともとCADが得意でなく、ずっと手書きの〝手CAD〞だったのですが(笑)、BIMのポテンシャルはすぐにわかり、これからはこれが主流になっていくと確信できました。自分で作業していても、BIMで施工ステップを一つひとつシミュレートする過程はモノづくりそのもので、実に面白いのです」
社内で4年間BIMの経験を積んだのち、家業である城所建設を継ぐために退職した城所氏。しかし「どうせならBIMの会社もつくりなさいと鹿島の上司から提案された」ことで、ビム・システムズの創業に踏み切る。当初から鹿島建設と業務委託契約を結び、16年までの受注は鹿島建設からの案件で占められていた。だが現在、新たなクライアントを獲得しつつある。転機は、『建設通信新聞』と日本建設業連合会主催のシンポジウムだった。
「城所建設はとび・土工の会社なのですが、現場の職人さんに施工情報を正確に伝達するための手段としてBIMを活用した事例を発表しました。毎朝の朝礼で3Dモデル画像を見ながら『今日の目標はここ』などと意識統一を図るというもの。イベント後、様々な会社から問い合わせがくるようになりました」
以来「一気に仕事の幅が広がって」、現在は月に3、4物件ほどのモデリングを行っている。
「5000平米〜2万平米程度の案件ならば、このペースで納品できます」
在宅での仕事環境を整えているのも同社の大きな特色だ。現在オフィスに常駐する正社員4名とは別に5名と業務委託契約を結び、クラウドサーバーを通じて在宅業務を任せている。皆、建築知識を持ちながら育児などで家庭に入っている通称〝BIMママ〞たちだ。
「私の妻は、大手ゼネコンで施工図作成業務に就いていました。子育てが本格化すると、家庭と仕事の両立が難しくなり、やむなく退職。スキルがあるのにもったいないと思っていました。同じような女性がたくさんいるはず。だったら、仕事と育児が両立できる在宅業務をメインにしてしまおうと考えたのです」
建設業界の労働力不足が慢性化し、政府は女性就業率の向上を目指している。同社の取り組みは双方を解決するソリューションだといえるだろう。現在のところBIMママはBIM経験者あるいは施工図作成経験者の2パターンが存在するが、「特に後者の経験者は貴重」。過去BIMに触れたことがなくとも、契約後にBIMソフトの操作知識を教育する体制を整えている。「最初は別のスタッフが作成したモデルが図面どおりかのチェックから始めてもらいます」
今後、拠点を増やしながらBIMママのネットワークを広げていく。これは様々な事情から出勤が難しい状況にある優秀な建築人材の受け皿になるだろう。
「女性に限らず、定年退職された方や、ハンディキャップをお持ちの方も大歓迎です。業務においては、施工計画そのものを提案できる会社になりたい。そのために実績を積み上げているところです。幸い、城所建設の仕事をとおして現場でBIMをどう使ったら役に立つか、日々実地の研究もできる。これも当社の強みだと思います」
- ビム・システムズ株式会社 代表取締役 城所秀樹(きどころ・ひでき)
1991年、日本大学理工学部海洋建築工学科卒業後、鹿島建設株式会社入社。
施工管理業務を長く務め、
2009年、同社BIM推進室の前身となる部署へ異動。13年、家業である城所建設株式会社入社。
同年、ビム・システムズ株式会社を設立し、
代表取締役に就任。
- ビム・システムズ株式会社
所在地/東京都大田区中馬込2-7-12-102
TEL/03-6303-8356
http://bim-systems.com/
代表の城所秀樹氏は鹿島建設出身。約20年にわたり施工管理に従事した。
2013年10月創業。父親が創業した城所建設も同時に継いだ。
主な業務は建物3Dモデリング、3D施工シミュレーションなど。