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街を森にかえるプロジェクト――。 “環境木化都市”の実現に向けて、 350m の木造超高層ビルを 建設可能とする研究開発、始動

街を森にかえるプロジェクト――。 “環境木化都市”の実現に向けて、 350m の木造超高層ビルを 建設可能とする研究開発、始動

住友林業 SUMITOMO FORESTRY CO., LTD.

住友林業が創業350周年を迎える2041年までに、70階建て・地上350mの木造超高層ビルの建設を目指す「W350計」。完成すれば世界一高い木造ビルになるが「建築の実現そのものが目的のプロジェクトではないのです」と中嶋一郎氏。真の狙いは、
再生可能な自然素材である木を活用し、地球環境・人の暮らしに貢献する「環境木化都市」の実現だ。

デザイナー志望から建材メーカーを経て建築の道へ

 「建物の木造化が進むと、木材需要が増え、二酸化炭素を吸収して炭素として固定化する量も増えます。また、木は再生可能な自然素材でもあります。街に木造建築物が増えるということは〝街を森にかえる〞ということ。我々が目指している環境木化都市とは、木を用いた持続可能な街づくりだと私たちは捉えています」

 中嶋氏は現在、住友林業の理事であり、同社グループの研究開発機関である筑波研究所長としてW350計画を牽引する立場にある。だが、彼のこれまでの経歴は少々異色といえる。「各専門家の方々は『なぜあなたが研究所のトップを?』と思うのではないでしょうか。私は最初から建築の道を歩んできたわけではないですから」

 家具のデザイナーになるか、美術教師になるか。学生時代の中嶋氏には2つの選択肢があった。「卒業する年には教職員の枠がなくて」就職した先が住宅用建材企業のデザイン室だった。建築資材のデザインを経験した後、マーケティング部に異動になると、ショールームの設計立案を任された。建築に興味が湧いたのがこの頃だ。

「自分がデザインした建築資材をどんな人が選ぶのか、思いを馳せているうちに『やはり、建築をやらないと話にならないのではないか』と。設計事務所を経て建築家として独立するか、企業で経験を積むか。迷った末に、木造住宅が王道だろうと考え、住友林業に転職しました」

 住友林業に転職後は、大阪で300件弱の実物件に携わりながら、設計も施工もと、住宅づくりの〝いろは〞を一通り学んだ。4年後には一級建築士資格を取得。以降、本格的に建築業界でのキャリアを積んでいく。

 住友林業での三十数年間のうち、もっとも長く携わったのは商品開発だ。木の力を最大限に生かすのが住友林業の家づくりである。例えば、樹種にこだわった同社オリジナルのシリーズ商品「スーパーナチュラル」シリーズでは、オークやチークといった世界各国の銘木でオリジナルの内装材をデザインする企画の立案を主導している。

「若い頃はずいぶん生意気な部分がありまして、言いたいことを言っていましたね。商品開発の後はコーポレート・コミュニケーション室に異動したのですが、これは『視野を広げる』という会社の意図があったものと理解しています(笑)。とはいえ、IRもブランディングもそれまで学ぶ機会がなかったこと。2年間、いい勉強をさせてもらいました」

住友が329年前、愛媛県の別子銅山の銅採掘に併せて、銅山経営に欠かせない
木材を調達するために備林経営を始め、住友林業はそれを創業としている。
だが200年を超える銅山経営を経て、森林は荒廃。
そこで1894年、第2代住友総理事だった伊庭貞剛は「大造林計画」を樹立。
多い年には年間200万本を超える植林を実施し、森を再生した。
この植林技術が、今なお住友林業の研究開発の根本にある
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知的財産室での4年間の経験がW350計画の礎に

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PROFILE

中嶋一郎

中嶋一郎
Ichiro Nakajima

1958年 和歌山県生まれ。
1981年 大阪芸術大学芸術学部デザイン学科卒業後、住宅用建材企業を経て、
    89年に住友林業株式会社入社。
2008年 住宅事業本部商品開発部長。10年、コーポレート・コミュニケーション室長。
2011年 知的財産室長。16年、筑波研究所長。17年、理事 筑波研究所長。
一級建築士。

住友林業/SUMITOMO FORESTRY CO., LTD.

住友林業株式会社
設立/1948年2月20日
代表者/代表取締役社長 光吉敏郎
本社所在地/東京都千代田区大手町1-3-2
筑波研究所/茨城県つくば市緑ケ原3-2
https://sfc.jp/

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