富士山を望み、社員の働きやすさと地元貢献を実現した企業の新本社屋。カタチにしたのは登録設計事務所
株式会社ハウシード 本社(静岡県富士市)
クリーク・アンド・リバー社(C&R社)は、同社に登録している設計事務所や建築士と建築プロジェクトとのマッチングを図り、双方の価値最大化を目指すプロデュース事業を展開している。この仕組みを活用し、2021年5月、静岡県富士市の不動産企業・株式会社ハウシードの本社社屋が竣工。今回、設計を担当したFEDLの伊原孝則氏とC&R社建築グループの松葉力に、本プロジェクトの経緯と成果を聞いた。
斬新な提案を求め、C&R社に依頼
06年、ハウシード社は東名高速富士インター出口すぐ、街道沿いのコンビニを改装した本社兼店舗を構え、不動産賃貸仲介事業をスタート。創業社長の横瀬直史氏は、当初より賃貸仲介業に留まらず、地域の不動産オーナーへのコンサル事業を目指していた。そのためには彼らが安心して任せようと思える企業イメージの醸成が不可欠であり、その象徴となる本社社屋が必要と考えた。そこで、創業15年の新社屋建設を計画。2年ほど様々な設計事務所などに相談するも、横瀬氏には〝刺さる提案〞が届かなかった。そこで、自社が加盟する全国賃貸管理ビジネス協会を通じて知ったC&R社に声をかけた。
「何名かの建築士の作品実績を横瀬さんにお見せし、最も好反応だった伊原さんを引き合わせました」と松葉。
伊原氏は横瀬氏の要望をじっくりと聞いた。若年層向けの賃貸ショップと不動産オーナー向けの資産活用コンサル事業という異なる顧客層を引きつける発信力を備えた外観、オーナーとの商談の場やイベントなどに活用できるスペースの設置、誰もが働きたい、訪れたいと思える内装デザイン、北側に望む富士山が背後に見える社長室、といった要望を鑑みながら初案を提出。
「その後3社で打ち合わせを繰り返し、伊原さんに最終的なデザインに落とし込んでもらいました」(松葉)
ロードサイド立地の視認性を高めた工夫
設計の特徴は、大きく3つある。1つ目は、交通量の多い街道沿いの立地を逆手にとって利用したこと。あえて道路の斜めに建物を置き、車からの視認性を高めた。また、一際目を引く縦長のファサードには、「英字社名をバウハウス校舎のロゴのように大きく表示したい」という施主の希望を取り入れてデザイン。
2つ目は、各フロアの内装。1階が賃貸ショップ、2階がアートギャラリー、3階が社長室、それぞれの目的に応じた異なるデザインを施している。実際に使う人の心地よさを第一に考え、一般材の見せ方を工夫したり、各階に配置するインテリアなどもすべてセレクト、コーディネートしながら表現したという。
3つ目は、地域とともに生きる企業の印象づくり。1階の賃貸ショップは全面ガラス張りで、シェードを伸ばせばオープンカフェのような雰囲気に。2・3階にバルコニーを設け、「イベントなどの活動が外からも見られるようにしました」と伊原氏は説明する。
着工後の20年1月、新型コロナが発生。従業員、顧客が集まる空間ゆえに、設計の見直しが生じた。しかし、伊原氏は、カウンターの幅の再考、パーテーションでの対応などをすぐに提案・実施し、微調整で事なきを得る。
「もともと窮屈な空間設計ではなかったことも幸いしました」と松葉。
「本プロジェクトではC&R社と明確な役割分担ができ、とても仕事がしやすかったです。施主側、設計側、両方の間に立ち、細かな調整、的確なアドバイスをもらえる。これからも、ぜひご一緒したいと思っています」
と伊原氏はプロデュース事業のメリットを話してくれた。
- クリーク・アンド・リバー社
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