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専門学校で学び、業界の発展・進化に 貢献できる建築人材を育てていく

専門学校で学び、業界の発展・進化に 貢献できる建築人材を育てていく

日本工学院八王子専門学校/日本工学院専門学校 副校長 山野大星

大学の建築学科を卒業し、設計事務所に6年ほど勤務した後、独立して設計事務所を立ち上げていた私が、日本工学院八王子専門学校の講師になったのは、1998年のことだ。もともと絵を描くのが好きな一方、数学など理系科目も得意だったことが、建築という進路を選んだ理由だったのだが、実際に生業にしてみると、一人でやっていくことの厳しさも実感させられた。

建築設計そのものよりも、新たなものを構想する都市計画のような分野が向いているのかもしれないという、ある種の迷いも生じていた。そんな時に、たまたま講師の公募を目にしたのが、教職への転職のきっかけだ。専門学校についての知識はほとんどなかったものの、実際にのぞいてみると、面白いことができそうだと直感した。当初は、設計の仕事と並行して授業をしていたが、建築を志す若者を育てる仕事に懸けてみたい、と教育を“本業”にすることに決めた。

当時80歳くらいだった同校創立者の片柳鴻という人は、現場に新しいニーズがあれば、積極的に取り入れようという精神の持ち主だった。例えば、「これからはCADの時代です」とノートパソコンを持参して説明すると、二つ返事で「よし、やろう」と応えてくれた。BIMの導入も早かった。インテリアデザイン科など新しい学科の設立の提案にも前向きで、結果的に世の中で求められている最新の技術や研究領域が学べる環境を、他校に比して非常に早い段階で整備することができた。

10年ほど前からは、建築分野の人材養成などをテーマにした文部科学省の委託事業も毎年受託している。当校が幹事校になり、大学などの教育機関や企業、行政などとの産学官連携で、例えばBIMを活用した次世代教育プログラムの策定、海外で通用する技術者の育成といった課題に取り組んできた。

共同研究を行う傍ら、企業などからの貴重な意見、提案があれば、それを授業のカリキュラムに反映した。そういった活動を通じて構築された幅広いネットワークも、大きな財産となっている。

2020年2月には、プロジェクトの成果を踏まえた「多摩地域建設人材育成協議会」が、地元企業、教育機関などが参加して設立された。中小のゼネコン、工務店などでも、建築人材の採用難は深刻だ。学生を送り出す我々の側としても、教育的なインターンシップなどを受け入れてもらえることには、大きな意味がある。協力して地域の建築人材を育てようというムーブメントを、さらに大きなものにしていきたいと考えている。

ただ、そもそも建築分野を志す若い人が減っている、という現実を直視しなくてはならない。業界も我々も、その仕事の魅力をもっと発信していく必要があるだろう。ひとくちに建築といっても、職種、働き方は様々だ。専門学校の利点をアピールさせてもらえば、我が校では、例えば「BIMなら任せろ」といった高度かつ最先端の専門性を身につけやすい。実際、そうしたスキルが評価されて、卒業生が競争率の高い大手設計事務所などに採用されるケースも出てきている。 求人票に大学の欄しかないことも多いが、専門学校も社会のニーズに応えようと頑張っているし、優秀な人材は多くいる。建築人材の採用を検討する際には、ぜひとも専門学校に目を向けてもらいたいと思う。

PROFILE

Daisei Yamano

Daisei Yamano
山野 大星

1985年、千葉大学工学部建築学科卒業後、建築事務所勤務、自身の事務所設立などを経て、
98年、学校法人片柳学園日本工学院八王子専門学校に入校。現在に至る。
慶應義塾大学大学院政策メディア研究科後期博士課程在学中。
全国専門学校建築教育連絡協議会会長、日本建築学会BIM設計教育ワーキンググループ委員
などを歴任。一級建築士。

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