学生・生徒が喜ぶ教育施設を思い描き、あらゆる可能性を追求した設計を
東急建設 第一建築設計部 教育施設チーム
現場のユーザーから予想外の意見も
幾多の設計部を擁する東急建設の中でも、意匠設計第一グループを中心に教育施設を担当するのが教育施設チームだ。「第一建築設計部」のもとに意匠設計部門が2グループ、構造部門、設備部門がそれぞれ1グループずつ存在。案件ごとに3部門からスタッフが集められ、チームが構成されるのが常だ。
「東急グループと教育とのかかわりは古く、各学校との付き合いは数十年に及ぶことも多いのです。そのため、できるだけ同じスタッフが一つの学校を継続的に担当する編成にしてあります」とグループリーダーの金子清氏は話す。
長い歴史と蓄積されたノウハウ。これらを背景に、各校が要求する要件を十二分に満たす提案ができることが、同チームの強みといえる。
「例えば、元気な子供たちの日々の使用に耐えうる安全・安心な施設。年々進化する教育内容に合わせてAV環境も充実させる。『環境に優しい』建築も近年のニーズです。どれも過去の蓄積があってこそ、ご提案できるものだと考えています」
教育施設の設計に携わる面白さの第一は「生徒や教員などユーザーの肉声を吸い上げるフェーズにある」と金子氏。学校側のプロジェクト担当者とのやり取りで進めていた設計が、教職員からの指摘により「本当にこれでいいのか?」と再検討を余儀なくされることも多々あるのだという。
「学校のユーザーは生徒、つまり子供たちです。時には大人が想像のつかないこともします。また、先生方は『階段がこの角度ではスカートをのぞく者が出てくるのでは?』といった心配をされることも。もちろん、検証・確認していきますが、我々設計者は『そんな可能性もあるのか』とそのつど驚かされます。問題を解決すると同時に普段は見えないユーザーの顔が見えてくる。ここに我々の仕事の面白さがあります。『図面を仕上げたらおしまい』といった種の仕事ではない。いつもユーザーを身近に感じていますね」
- 「これがベスト」と確信できる提案を
- 「これがベスト」と確信できる提案を
「これがベスト」と確信できる提案を
金子氏は、設計者に求める資質について「お客さまの要望に対して可能性を追求できる人」と表現する。
同チームに蓄積されたノウハウをもってすれば、施主側の要求をまとめたプランは提案できる。だが、それがベストな提案かというと、必ずしもそうとはいえないのだ。
「『これが一番いい提案なのだ』という確信にたどり着くには多くの関係者の意見を聞き、議論を重ね、あらゆる可能性を探らなければなりません。正直、かなり面倒な作業ですし、タイミングによって『ただでさえ忙しいのに、そんなことまで考える必要があるのか』と疑問に思うかもしれない。しかし、この作業はお客さまに自信をもって提案するためには不可欠。単純なミスも未然に防ぐことができると思うのです。この作業を厭わず、可能性を追求できる人材を歓迎します」
あらゆる可能性を追求する同チーム。ここでは、スタッフ皆が自らの考えをオープンにし、時間を惜しまず意見を交わす習慣が浸透し切っている。
「おかげでチームワークは抜群です。夜遅くまで仕事をすることもありますが、連れだってよく飲みに行きますし、和気藹々とやっている」とグループリーダーは頬をゆるめる。
金子氏が今後のチームづくりの目標に位置づけるのが、プロポーザル案件への対応だ。近年、コンペへの参加が増加傾向にある中で、いかに機動力を発揮し、素早く提案できるか。それを可能とするチーム編成を画策中である。
「コンペに勝つために必要なことも、基本的には普段の仕事と同じです。いかにたくさんの角度・視点から可能性を検証し尽くせるか、そこにかかっています。時間的な制約がある分、肉体的・精神的には大変ですが、それだけにコンペに勝った時の喜びはひとしお。私もスタッフたちも、いつでも『望むところだ』という構えでいます」
- 金子 清
かねこ・きよし
1988年、武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部建築工学科卒業後、
東急建設入社。設計部に配属される。
97年、マサチューセッツ工科大学大学院修了。
帰国後は、東京都市大学をはじめとする教育施設の設計、
ユニバーサルスタジオジャパンの実施設計に携わる。
2012年、グループリーダーに就任
- 東急建設株式会社
1946年、東京急行電鉄が建設会社として東京建設工業を設立。
後に東急不動産と合併、東急不動産の建設工業部に。
63年、東急不動産から分離した東急建設が東証二部に上場。
67年、東証一部上場。渋谷など東急沿線の街づくりに始まり、建築事業、土木事業、ニュータウン開発、
都市再開発、技術開発、エンジニアリング事業などの各種社会基盤づくりを担う。
東急グループが五島育英会や亜細亜学園などを抱えていることから、教育施設設計の実績も多数。