アーキテクト・エージェンシーがお送りする建築最先端マガジン

Architect's magazine

“建築家との協働”を大切にしながら、 常に最先端の設備設計を提案し続ける。 未来の人材育成も、私たちの使命

“建築家との協働”を大切にしながら、 常に最先端の設備設計を提案し続ける。 未来の人材育成も、私たちの使命

ZO設計室

現在の陣容は約30名。半数以上を女性が占める。代表の伊藤氏が子育てをしながら働き続けていたこともあり、ライフステージに合わせながら長く働くスタッフも多い

多くのアトリエ系設計事務所からの協働依頼が後を絶たない〝アトリエ系設備事務所〞、ZO設計室。近年、要求がますます高度化する環境・設備設計に意欲的に取り組む姿勢が、建築家たちの厚い信頼を集めている。

柿沼整三氏がZO設計室を創設した1981年は、いわゆる〝オイルショック〞直後の時代であり、省エネルギー設計の黎明期でもある。以来、省エネ・環境配慮を念頭に置いた設備設計を続けてきたが、特に2010年頃から世界的に環境への危機感が高まり、建築においての設備設計の役割が大きく変化した。同室でも、里山の自然との共存を目指した「七沢希望の丘初等学校」や、10年には、エネルギーの使用を極限まで抑えた実験的住宅「乃木坂ハウス」を設計。翌年には、環境省のモデル事業であるエコハウス、建築研究所のLCCMデモンストレーション住宅のプロジェクトなどにも参画し、現在の同室の礎をつくってきた。

「実験的な設備設計を経て、公共プロジェクトでの環境配慮型建築にかかわれたことが、ZO設計室のその後の成長、発展につながりました」と柿沼氏は当時を振り返る。

現在、手がけている物件は、100㎡ほどの住宅から数万㎡の大規模施設まで、年間70件以上。公共建築は、プロポーザルから加わって獲得したプロジェクトに限って仕事をする方針を貫いている。ZEBやZEHなど、建築物に対する高次元のエネルギー対策が求められるなか、施主や建築家の環境保全意識も高まり、チャレンジングな設計に対して適切な設備設計のアドバイスを求めてくるケースが増えてきた。

断らざるを得ないほどの依頼数があり、法令対応などで業務量も増加していることから、特に即戦力となる中堅技術者を求めている

「建築家から相談を受けた時に、できないという選択肢はありません。初めて挑む条件でも、進めていけば最適解は見つけられるという意気込みで設計に取り組んでいます」と共同代表取締役を務める伊藤教子氏は語る。ゆえに重要なのは理論的な裏付けであり、両氏は設計と並行して環境・設備に関する執筆活動も継続して行っている。

近年では、屋久島町庁舎でアルセッド建築研究所と協働し、中大規模木造建築物における設備設計手法を確立した。中大規模木造建築物のニーズは依然として高く、現在は、延床面積6076㎡、地上8階建ての純木造オフィスビルの設備設計も進めている。

ZO設計室が最も大切にしているのは、あくまでも〝建築そのものが好き〞という思いである。単に設備が適切に収まればいいのではなく、手間をかけつつも建築家とともに独創的な作品をつくり上げる過程に喜びがあるのだ。これを共有できるメンバーを育てたいという思いから、同室は19年より毎年1回、「建築シンポジウムKENDAN」を主催している。

「若いスタッフがある著名建築家の名前を知らなかったことに驚いたことがきっかけです。社内研修として企画しましたが、せっかくなので外部にも公開することに。これまでに私たちと協働した建築家をお招きして、対談をしていただいています」と柿沼氏。

現在、全プロジェクトの設計に柿沼氏と伊藤氏のどちらかが必ずかかわることで、アトリエ事務所的組織体制が保たれている。プロジェクトが増えているなかでも、「すべての計画・設計に参加して手を動かし、完成を見届けたい」――これが両氏共通の願いだ。

「設備事務所らしくなりすぎないようにしていたいですね。建築という行為のなかで、たまたま設備を専門にしているくらいの気持ちを持ち続け、建築家の目指す建築を理解し、分かち合い、常に頼られる設備設計者集団でありたいと思っています」(柿沼氏)

PROFILE

有限会社ZO設計室

有限会社ZO設計室

所在地/東京都中央区京橋3-3-13
平和ビル三号館4階
TEL/03-6854-4287
http://www.zoconeng.co.jp/
1981年創立。意匠事務所からの依頼に合わせて、電
気・機械設備設計、省エネルギーシステムの提案、工事
監理を行う。建築意匠を十分に理解し、環境配慮を念
頭に置いた設備設計を手がけている。

代表取締役
柿沼整三


かきぬま・せいぞう

工学院大学工学専攻科建築学専攻修了後、
同大学中島研究室研究主任。
1981年、ZO設計室主宰。
87年、有限会社に改め代表取締役就任。
関東学院大学、東京理科大学非常勤講師。
東京建築士会環境委員会副委員長、
空気調和衛生工学会住宅設備委員会委員長などを歴任。
『断面図でわかる建築設備』(彰国社)など共著多数。
設備設計一級建築士。技術士(建築環境)。

代表取締役
伊藤教子


いとう・のりこ

2014年、首都大学東京大学院都市環境科学研究科建築学域博士課程修了。
21年よりZO設計室代表取締役。
多種多様な建築の環境設計・設備設計を手がける。
東京理科大学、東京都立大学非常勤講師。
共著に『設備設計スタンダード図集』(オーム社)、
『クリマデザイン新しい環境文化のかたち』(鹿島出版会)など。
博士(工学)。設備設計一級建築士。

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