業界の非効率を大きく改善する、 “最高のツール”を開発・提供し、 建築をつくる人を、笑顔にする
AMDlab
AMDlabは、藤井章弘氏が大学の同期だった松原昌幹氏とともに設立した建築テック企業である。藤井氏は神戸大・大学院で構造を専攻し、ワシントン大学での留学経験を通じて建築におけるデジタル技術の可能性に触れた。大学院修了後は組織設計事務所に構造設計者として就職。在籍した5年間、多くの作品に携わるなかで、設計業務の非効率な現状を肌で感じた。
「コミュニケーションコストが高く、膨大な事務作業に押され、本来のクリエイティブな作業に時間が割けない状況がありました」と藤井氏は振り返る。
一方で、藤井氏は業務のかたわらブログを執筆し、建築テックに関する情報を積極的に発信していた。設計者が少しでも効率的な業務に取り組んでほしいという思いがあったという。当時はそういった内容のメディアがほぼなく、ブログをとおして様々な企業から相談が寄せられるようになった。
「組織設計事務所では、閉じた世界に生きているという感覚がありました。このまま社内のDX化に携わるよりも、外に出て建築以外の人材も巻き込みながら活動すれば、より大きなムーブメントを起こせると考え、起業を決断。すでに企業から多くの依頼が来ており、十分に助走をつけたスタートでした」
事業拡大の契機となったのは、設備建設企業と共同で開発した「駐車場設計支援ツール」だ。時間をかけて行っていた駐車可能台数の算出を自動計算で割り出し、即座に図面化するツールだ。ほかにも設計を効率化する要望は多く、その後も企業ごとの課題を解決する案件をいくつも手がけていった。
同社には設計士、Webエンジニア、UI/UXデザイナー、AIエンジニアなど、多様な専門を持つ人材が在籍。案件ごとにチームを組むことで各自の専門性がつながり、建築領域に新たな価値を生み出している。
「コロナ禍前から業務はフルリモートで行っていました。優秀な人材を広く集めるためにも、場所にとらわれない自由な働き方を進めています」
同社は一級建築士事務所登録をし、設計業務も受注している。住宅設計では、耐震補強の計算に専用ツールを開発し、最適解を導いた。
「実設計に独自の手法を併せて紹介できれば、大きな説得力になります。より多くの人に興味を持ってもうための糸口としても、引き続き設計業務に取り組んでいくつもりです」
現在、力を入れているのが自社オリジナルツールの開発である。創業以来の経営基盤は企業などから依頼される受託開発だが、それぞれの依頼の根底には共通の課題が潜んでおり、企業ごとに解決できたとしても局所最適化にしかならない。建築設計の根底から改善できる総合ツールを提供することで、より多くの設計者に価値を提供でき、例えば、企業ごとのカスタマイズも容易になると考えた。
「今春、DDDDbox(フォーディーボックス)をリリース予定です。これはWebブラウザで動作するBIMであり、スマホやタブレットなどでも設計ができるようになる新たなツール。構造解析や申請支援など設計業務を幅広く支援し、多様なデータの整理も一括して行えるため、設計士は本来の設計業務に集中できます。多様なITデバイスがシンプルに軽量化していくなかで、どこからでもデータにアクセスして身軽に働ける未来が近づいています。私たちは、建築業界でもそれが実現できると確信しています」
同サービスはすでにアーリーアクセスユーザーによるテストが始まっている。また、同社が開講しているオンライン建築学校「AMDhaus」で、同サービスを教育面からサポートし、導入を後押ししていく戦略だ。
「鉛筆と筆とでは書く字が違うように、設計するツールによって建築そのものが変わる可能性もあります。私たちが効率的な設計手法を提供することで、建築業界により新しい価値観を生み出すことができるはず――当社の挑戦にぜひ注目していてください」
- 代表取締役CEO 藤井章弘(ふじい・あきひろ)
2010年、神戸大学工学部建築学科卒業。
13年、同大学大学院工学研究科建築学専攻修了
(Universityof Washington Master ofArchitectureに1年間留学)。
14年、株式会社松田平田設計入社、構造設計部に所属。
19年、合同会社AMDlabを設立し、代表社員就任。
21年、株式会社に組織変更し、代表取締役CEO就任。
一級建築士。
- 株式会社AMDlab
所在地/神戸市中央区栄町通5-2-2-202
TEL/078-600-2420
https://amd-lab.com
2019年設立。受託開発から自社プロダクト開発まで、
設計業務の効率化を目指した事業を展開。ゼネコンや
メーカーなどの依頼で常時20~30件の案件を抱える。
今春、自社サービスの「DDDDbox」をリリース予定。