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自宅、別荘でもあり、 ホテルでもある̶̶。 “暮らし”の価値を 創出し続ける建築チーム

自宅、別荘でもあり、 ホテルでもある̶̶。 “暮らし”の価値を 創出し続ける建築チーム

NOT A HOTEL ARCHITECTS

 デザイン性と快適性を両立した、ハイエンドな別荘を提供するNOT AHOTEL。自分で利用する時はくつろげる自宅・別荘として、滞在しない期間はホテルとして貸し出すことができるのが特徴だ。現在、AOSHIMA(宮崎県)、NASU(栃木県)、KITAKARUIZAWA(群馬県)など国内6カ所に展開する拠点は、どれも気鋭の建築家やクリエイターが手がけ、それぞれの土地の魅力を最大化する斬新なデザインばかり。併せて照明や温度調節など全設備をスマートフォンで操作可能。部屋の予約、収益の確認までアプリ一つで完結するというユーザー体験にもこだわっている。ともに2021年6月に入社し、この〝唯一無二〞の建築をかたちにしてきた綿貫將氏(NOT A HOTEL ARCHITECTS 管掌)と松井一哲氏(同クリエイティブディレクター)に〝ここでの仕事〞について聞いた。

土地探しから運営まで事業者としてかかわる

二人とも日建設計の出身で、綿貫氏は設備設計、松井氏は意匠設計に携わっていた。「どちらかというと保守的な設備設計に身を置いていて、いつかはその殻を破りたい気持ちがあった」綿貫氏。入社当時の同社は4、5名の所帯で、建築の経験者は皆無。入社意向があったものの「意匠側に優秀なメンバーがいないと仕事は回らない」と考え、2人目のメンバーとして誘ったのが松井氏だった。

「建築学科に通う学生時代から〝暮らし〞そのものへ強い関心がありました。生活の根幹である衣食住のなかで、〝住〞だけは一度選ぶと容易に転居することができず、自由気ままに選択することが難しい。だからこそ〝住〞の未来について考えるのは面白いし、まだまだ可能性がある。一方で、建築という専門だけでそれを考えていくのは限界がありそうという思いをずっと抱いていました。『NOT A HOTELには様々な分野のプロフェッショナルが集まり、新しい暮らしやこれまでにない用途の建築の創造を目指している』。入社前にそんな話を聞いて、すごくワクワクして」と松井氏は振り返る。ただし、〝新しい暮らし〞を掲げる同社で任せられた仕事の領域の広さは、二人の想像を超えていた。

「松井は、そうはいっても意匠設計をメインにやっていくつもりだったはず。ところが蓋を開けてみたら、当社の販売の鍵であるCGパースのディレクションやプロモーションビデオの制作など、ブランディングにかかわるディレクションもやってほしい、と。以来、彼がデザインやCGパースも含むクリエイティブ全般で中心的な役割を担うことになりました」(綿貫氏)

 一方、綿貫氏に託されたのは、ひとことで言えば「そのほか、PMを含むすべて」だった。

「当社の場合、絶好のロケーションながらインフラなどが未整備で開発するのが困難な土地を購入することも多く、ここの課題をどうクリアしようか、と考えるのが基本的なプロジェクトのスタート。しかも、唯一無二の建築でありながら、1年以内に確認申請して販売するという開発スピードも重視しています。そういったプロジェクトの核になる部分を軌道に乗せ、最後に着地させていくのが、僕に課せられたミッション。正直、未経験のことばかりでしたが、やるしかないといった感じでした」

奮闘したのはプロジェクトの完遂だけではない。この時期、ブランド価値を左右するデザインコードの整備も同時並行で二人が先導した。そうした〝痺れる仕事〞を通じて得たのが、「必ずしも有名建築家と資金力ある事業者がいれば、いいものができるわけではない。最も大事なのはブランドを理解し、全体をマネジメント、ディレクションできる事業者がいること」(綿貫氏)という確信である。

実際、NOT A HOTELは開発から建築、さらに施設の運用までを一貫して担う存在だからこそ、可能になったビジネスモデルにほかならない。このビジネスモデルが、ここで働くメンバー全員の発想を大きく広げる機会を提供してくれていると松井氏は言う。

「設計事務所では、建物が竣工すれば、基本的に仕事は終わり。でも、事業者としては、ある意味そこがスタートなんですね。今はその一員として、できた建物がどのように運営されるのか、風合いなどにどんな変化が起こるのかまでを把握し、仕事にフィードバックしています。また、事業者側にいることで、建物を利用したすべてのオーナーや宿泊者の喜ぶ顔を見ることができる。自分たちがつくった建築に〝深い愛〞が持てるという感覚を、僕はここで初めて得ました」

NOT A HOTEL NASU(栃木県・那須)
高い丘の上に佇む建物は、そのほとんどが外に開かれ、広大な自然とシームレスにつながる“浮遊の家”だ。余計な装飾のないコールテン鋼の外装は、周囲の自然とも見事に調和する。敷地面積は約1 3 0 0㎡で、2 階建ての建築面積はテラスを合わせ5 0 0㎡を超える。SUPPOSE DESIGN OFFICEの谷尻誠氏、吉田愛氏のデザイン
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さらに設計力を高め新規案件・事業に挑む

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PROFILE

NOT A HOTEL株式会社

設立/2020年4月1日
代表者/代表取締役 濵渦伸次
所在地/東京都渋谷区千駄ヶ谷3-11-8
https://notahotel.com/

綿貫 將/Tasuku Watanuki


NOT A HOTEL ARCHITECTS管掌
1989年、長野県生まれ。
芝浦工業大学大学院修了。
日建設計にてホテル、オフィス、美術館、図書館、スタジアム、銀行、研究所、データセンタ案件の設計に従事。
2021年6月、N O T A H O T E L 参画。
現在はArichitecture領域の管掌。

松井一哲/Kazuaki Matsui


NOT A HOTEL ARCHITECTSクリエイティブディレクター
1987年、北海道生まれ。
東北大学工学部卒、東京大学大学院建築学専攻修了。
日建設計にて建築設計に従事後、WeWork Japanにて内装デザインを担当。
2021年6月、NOT A HOTEL参画。一級建築士/管理建築士。

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