アーキテクト・エージェンシーがお送りする建築最先端マガジン

Architect's magazine

「人と自然の共生」をテーマとした、 新たなライフスタイルブランド。 環境を再生・循環する建築の可能性に挑む

「人と自然の共生」をテーマとした、 新たなライフスタイルブランド。 環境を再生・循環する建築の可能性に挑む

SANU

 SANUは、人と自然が共生する社会の実現を目指すライフスタイルブランドとして2019年に創業。メンバーシップ制によるセカンドホームサービス事業を通じて、「都市と自然を軽やかに行き来し、生活を営む」新しい生活様式を提案している。

 提供するサービスは、個人向け月額制サブスクリプションプラン、福利厚生を想定した企業向け法人契約プラン、必要な泊数分を不動産資産として所有できる共同オーナー型プランの3タイプ。創業当初、宿泊可能なセカンドホームは軽井沢、河口湖など関東近郊が中心だったが、現在は全国28カ所、約170室が稼働しており、今後、奄美大島、ニセコなどへも展開しつつ、25年度末には約300室、26年度末には海外も含めた美しい自然を有するエリアへの展開を計画している。

 創業者2名によって設立された同社は、現在、従業員約60名を擁する。そのうち、セカンドホームの企画から建設までを担うディベロップメント本部に約20名のスタッフが在籍。これまでは外部設計者と協業し、事業主としてのプロジェクトマネジメントに注力してきたが、24年度に一級建築士事務所の登録を完了したことで、今後は自社の理念を体現する建築を自社設計で手がけるスタイルを目指している。

東京・中目黒にある本社の地下1階・1階は、地球を愛する人々が集うラウンジ「SANU NOWHERE」として、昼はコーヒー、夜はタコスを提供。毎晩19時頃に自然を題材とした映画の上映などイベントも開催する

 同社が掲げるビジョンは、社会と自然との共生。その実現に向け、環境配慮型建築の開発に力を注いでいる。

「当社が建設するセカンドホームは、すべて木造です。国産材の使用率を最大化し、建設地の地産材を積極的に採用しています。また、建設工程で消費した資源を新たに植林することで、森の循環を促進しています」とディベロップメント本部の石川悠介本部長は環境への取り組みを説明する。

 同社の建設プロセスは、建築物のフットプリント以外は極力自然を損なわないよう徹底している。伐採樹木が最小限となる工事動線を設計し、伐採せざるを得ない樹木の一部は移植するなど、ネイチャーポジティブな開発を実践しているのが特徴だ。また、建築手法として、プロトタイプを作成し、それを各計画地の与件に適応させながら展開する方針を貫いている。

「Apple製品のようにデザインと機能を洗練させ、一つのプロトタイプに磨きをかけていく。その建築プロセスは、当社の理念を反映しています」

ディベロップメント本部で建築業務に携わっているメンバーは現在8名。アトリエ事務所や組織設計事務所、ゼネコン、デベロッパーなどからのキャリア採用だ。今後は新卒採用も視野に入れている

 今後の展開を見据え、同部では求める人材像を次の3つに分類している。第一に、自主設計の業務全般をリードできるチーフアーキテクト候補。第二に、プロジェクトマネジメントの中核的な役割を担える人材。そして第三に、同社の象徴ともいえる環境分野に精通し、リーダーシップを発揮できる人材だ。シミュレーションや温熱計算などの実務スキル以上に、環境課題を俯瞰的に捉える能力を重視している。

 日本での別荘のサブスクリプション利用は、定住型ライフスタイルに新たな価値観を付加する革新的な提案だ。

「これまでにない価値を創出し、人々が求める新しいライフスタイルを提案することこそ、〝スタートアップ〞の使命です。サービスの利便性や魅力をさらに高め、幅広い層への普及を図ることで、市場拡大の可能性は十分に見込めると考えています」

 同社は、宿泊施設のみにとどまらないエリア開発を中長期的な展望として掲げている。現状では1ha未満の規模のプロジェクトに抑えているが、将来的には宿泊施設を核に、ワークラウンジ、ネイチャーアクティビティベース、レストラン、パークなど多機能を融合させたヴィレッジ型の拠点開発を目指す。これにより、同社のビジョンをさらに具現化し、独自の価値を提供
したいと石川氏は展望する。

「環境に最大限配慮した開発手法を確立しつつ、行政との連携も模索することで、通常では建設が難しいエリアにも新たな可能性を示せると考えています。すでにいくつか話を始めており、近い将来、正式なプロジェクトとして動き出せると確信しています」

PROFILE

石川悠介(いしかわ・ゆうすけ)

石川悠介(いしかわ・ゆうすけ)
執行役員ディベロップメント本 部長

2011年、早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻修了。
森ビル株式会社に新卒入社し、用地、開発、設計と再開発事業に従事。
主に担当したのは、麻布台ヒルズ。
2 2 年、新たな挑戦先としてSANUにジョインし、事業開発を統括する。
SANUを通じて自らと家族のライフスタイルを模索する、1児の父。
野球と箱根、ノルウェーが好き。一級建築士。

株式会社Sanu

所在地/東京都目黒区中目黒3-23-16
TEL/03-6555-5201
https://sa-nu.com/
サブスクリプション型で別荘を利用できるサービス
SANU 2nd Homeなどの開発・運営を行う。
「Livewith nature.」をコンセプトに掲げ、人が自然と調和しな
がら健康的に暮らせる新しい生活様式を提案している。

人気のある記事

アーキテクツマガジンは、建築設計業界で働くみなさまの
キャリアアップをサポートするアーキテクト・エージェンシーが運営しています。

  • アーキテクトエージェンシー

ページトップへ