「TODA BUILDING」誕生! 〝突出価値〞を高める挑戦が加速する
戸田建設株式会社 の取り組み
2024年11月2日、戸田建設の5代目新社屋を含む超高層複合ビル「TODA BUILDING」(東京・京橋)が開業した。今回は、同社の代表取締役社長・大谷清介氏に、ブランドスローガン「Build the Culture.人がつくる。人でつくる。」を体現する役割も担う新本社ビル建設への思いとこだわり、戸田建設が目指す未来への取り組みをうかがった。
アートとビジネスが融合する新たな拠点
戸田建設が120年以上にわたり社業を営む東京・京橋は、古美術商や現代アートのギャラリーが点在する芸術文化の街でもある。戸田建設は、本社ビルの建て替えを機にこうした街と人を〝つなぐ〞ことを目指した。完成したTODA BUILDINGは、8〜27階をオフィスフロアとする一方、1〜6階を芸術文化施設と商業施設に。またビル正面に大きな広場を設け、エントランスロビーを開放、街ゆく人も1〜2階に展示されるパブリックアートを自由に鑑賞できる計画としている。
「建物自体にも、つくり手の存在を感じられるデザインや素材を随所に採用しています。例えば、エントランスから4階まで続く大きな壁には、旧社屋で使われていた京都産の『泰山タイル』を再構築したタイルを用いました。色合いに様々な表情が出るよう、釉薬にも工夫を凝らしています」と大谷氏は語る。
構造面の特徴として挙げられるのは、日本国内最高クラスの耐震性能だ。「コアウォール免震構造」を採用し、地震時の変形を一般的な制振構造の4分の1に、免震構造の2分の1に抑えた。
「ゼネコンが本社ビルを建てるからにはコストや工期の課題は承知のうえで、現時点での〝最高〞を追求するべきと判断しました。幸いテナントはほぼ埋まっており、芸術文化面の価値に加えて耐震性能の高さも評価されている手応えを感じています」
環境性能では、超高層複合用途ビルとして日本初となる建物全体での「ZEB Ready」認証を2021年9月6日付で取得。また、同社が入居するフロアでは、次世代のスマートオフィスづくりにも挑戦。社員の位置確認、会議室での飲み物注文など、様々なサービスがアプリを介して提供されている。
「本プロジェクトは、最先端ビルの建設のみならず、街づくり、芸術文化、防災減災、スマート化、環境・エネルギーなどにまつわる自社の技術を研鑽するための場にもなりました。当社の、現時点における最新技術をステークホルダーの皆さまに見ていただくための〝ショールーム〞ができたと自負しています」

TODA BUILDINGは、日本国内最高クラスの耐震性能を実現するため、「コアウォール免震構造」を採用した。1階床下に設けた免震層により敷地の大部分を免震構造とすることで、地震時に広場を含めた建物内外の安全性を高め、事業継続性(BCP)、地域継続性(DCP)に貢献。有事の際には、帰宅困難者の一時滞在施設として活用される ■竣工写真撮影/株式会社川澄・小林研二写真事務所
情熱ある人材を待つ多種多様なフィールド
同社のブランドスローガンは「Build the Culture.人がつくる。人でつくる。」――社会や人々の価値観が変化した現代、建設会社に求められる役割は、パートナーとの〝協創〞を通じて新たな価値を創出し、〝未来〞そのものをつくること。創業150周年を迎える2031年を見据えた未来ビジョン「CX150」でも協創社会の実現を目標としている。
「これからも、そうした社会ニーズを満たす当社ならではの〝突出価値〞を磨き、発揮していく考えです。当社は2050年の街の姿として『スマートエネルギーコンプレックスシティ構想』を打ち出し、都市機能を集約、脱炭素化を目指すエネルギーシステムを提案していますが、TODA BUILDINGもその実践の一つ。CX150は着実に前進しています」
企業の目指す姿が変われば、そこで活躍できる人材の姿も変わるはずだ。今、戸田建設がビジョン達成のために必要としている人材像とは。
「当社としては、求める人材を特に限定するつもりはありません。ものづくりに情熱を持った人であればどんな方でも活躍できる、広いフィールドを用意することが採用に向けた私たちの役割だと考えています。私が社長に就任して以来、当社は『働き甲斐改革』に取り組んでおり、今年で5年目を迎えます。そこでわかったのは、多様性の時代といわれる昨今、働く人たちがどこにやりがいを感じるかも多様化していること。あらゆる個性を最大限に生かせる環境整備を進めているところです」

1~6階の低層部を芸術文化施設と商業施設で構成し、ビル共用部でのオフィスワーカーと芸術文化エリア利用者の交流を意図した計画となっている。また、中央通り側に広場を設けることで街に開かれたビルとし、アートへのアクセス性を高め、アートとビジネスの融合を図る。写真左/1階・2階の共用部、新進アーティストやキュレーターが作品発表を行う「APK PUBLIC Vol.1」(写真の展示作品は、持田敦子《Steps》2024)。写真右上/3階、現代アートを代表する4つのギャラリーが集結するギャラリーコンプレックス。写真右下/6階、ポップカルチャーや現代アートなどの展覧会を開催する「CREATIVE MUSEUM TOKYO」
現在、戸田建設のグループ全体の従業員数は約6800名。事業会社としては十分すぎる陣容ともいえるが、ゼネコンとしては準大手であり、スーパーゼネコンと比べれば3分の1程度の規模だ。しかし「準大手の規模だからこそ発揮できるものがある」と大谷氏は言う。「例えば、従業員にとって組織の歯車にならず『自分が主役になれる』規模感は魅力だと思います。物事に対し、達成意欲を持って主体的に行動できる方を私たちも必要としています。また、社会変化に迅速に対応できる機動力が当社にはあります。
集中すべき課題にリソースを集め、他社にはない突出価値を創造できているのもそのためです。そして、ブランドスローガンで『人がつくる。人でつくる。』と言い切っているように、人によるものづくりのDNAが、今も息づいている。どれもが当社の強みだと考えています」
労働力不足や資材高騰など多くの課題に直面している建設業界。だがゼネコンには常に果たすべき使命がある。戸田建設もまた、2025年度に控えている新中期経営計画のなかで、新たな挑戦を発表することになる。
「人々の生活の質を維持するため、また防災減災のため、建設業界に対する社会的要請に応え続けなければなりません。省エネ建材や再生可能エネルギーの利用を通じた環境性能の向上も建設業界が担うべき部分です。新中計が始まる2025年度以降も、TODA BUILDINGの運用段階におけるブランド価値最大化や、浮体式洋上風力発電の大型化に向けた技術開発などを進め、引き続き企業価値の向上を図っていきます」
- 大谷清介/Seisuke Otani
戸田建設株式会社 代表取締役社長 1982年、北海道大学工学部建築学科卒業後、戸田建設に入社。
一貫して東京支店建築工事部で経験を積み、建築施工の第一線に携わる。
作業所長として丸の内オアゾをはじめとした大丸有地区の大型
プロジェクトを数多く手がけたのち、2016年、千葉支店長、18年、
関東支店長、20年、管理本部執務、常務執行役員などを歴任し、
21年4月より現職。
- 戸田建設株式会社
創業/1881年1月5日
所在地/東京都中央区京橋1-7-1
https://www.toda.co.jp/