時代は、“つくる”から“使いこなす”へ。付加価値を最大化するリノベーション
ブルースタジオ
モノ・コト・ジカン。3つをデザインする
同社が主に手がけているのは、古くなった建物に付加価値を与え再生させる、リノベーション。これまで、多くの物件に新たな命を吹き込んできた。その数は、個人住宅400軒、賃貸住宅1000戸を超える。加えて、商業施設の設計、まちづくりなどの依頼も多く引き受けている。
2000年代初頭、不良債権処理が社会的課題になっていた。「不動産の証券化が始まり、土地だけでなく、建物の価値が評価される時代が来た。僕が温めていた構想を試すための条件が整ったわけです」と、専務取締役の大島芳彦氏は語る。
「〝衣・食・住〞のうち、〝衣〞と〝食〞は付加価値で価格が上がるけど、〝住〞=建物の評価は、時間とともに下がる一方。理由は明確で、〝住〞の価値は、あくまでも土地。不動産屋から見ると〝商品価値〞、金融会社からは〝担保価値〞。部屋や建物を実際に使う人の〝生活価値〞がずっと無視されてきたのです」
同社は、「建築設計(=モノ)」「広告(=コト)」「不動産(=ジカン)」の一貫したサービスを提供している。広告・デザイン業界出身の代表取締役社長・大地山博氏と、建築設計・不動産のバックグラウンドを持つ大島氏のスキルを融合し、独自のビジネスモデルを構築した。
「僕たちの仕事は、モノ・コトを〝つくる〞だけでなく〝使いこなす〞。つまり入居者に活用してもらい、ジカンの価値を持続させるまでと考えています」
初めて着手したのは、1968年築、2DKの賃貸マンション。空室が続き、賃料が下がる、まさに〝住〞の苦悩に直面していた物件だ。大島氏はまず、ターゲットニーズと間取りがアンバランスなことに気づく。
「東中野は都心に近く、忙しく働く人が住むエリア。ならば、この間取りは適切でない」と考え、「30代・働き盛り」を想定。1LDKの部屋にリノベーションした。また、独自の宣伝材料をつくり、賃料を新築レベルにアップ。すぐに入居が決まった。
「リノベーションとは何か、を示すよいモデルになりました。とはいえ、その後も仕事がない時期が続いた。それでも、〝世の中に必要なビジネス〞だと信じて続けてきたのです」
- 物件に〝物語〞を描くプロ集団に新風を
- 物件に〝物語〞を描くプロ集団に新風を
物件に〝物語〞を描くプロ集団に新風を
「物件を一貫性のある〝物語〞へと編集すること」
大島氏は、同社のリノベーション・テーマをこう語る。
「この人(=キャスト)、この場(=シーン)、このタイミング(=シナリオ)でなければできない、〝物語〞をデザインするのです。この〝物語〞に共感し、オーナー・生活者の双方が理想の生活環境を形作る当事者となりうる状態をつくり出すことが、一番の喜びであり、やりがい」
そんな〝物語〞をつくり出す社員たちの多くは、様々な分野から中途入社してきたプロフェッショナルたち。個人向けサービスを行うCS(コンシューマーサービス)事業部、法人向けサービスを行うCG(コンサルティンググループ)事業部、SD(スペースデザイン)事業部、および不動産事業部の4部署31名で構成される。そのうち、設計者は約3分の2を占める。
「来年度からは新卒を積極的に採用しようと考えています。在籍するプロたちの能力を、無限の好奇心とともにスポンジのように吸収し、次世代へつないでくれる人材を。問題意識が高く行動力のある人が欲しいですね」
今後は、〝住育〞〝街リノベーション〞にも注力していく。学生と共に都市の木造密集地帯の住みこなし方を考える「木賃アパート再生ワークショップ」や、北九州からはじまり地方都市再生のためのワークショップとして開催している「リノベーションスクール」が全国の都市に飛び火している。
「住まいも、〝自分らしく〞編集することが好まれる時代。今後、リノベーションの概念は、確実に広まっていくでしょう。我が国の人口減は、待ったなし。新たに〝つくる〞より、いいものを長く〝使いこなす〞が、建築・不動産業界、ひいては日本経済にとって、賢く、そして正しい選択だと思うのです」
- 大島 芳彦
1993年、武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、
The Bartlett UniversityCollage London(英国)、
Southern California Instituteof Architecture(米国)に学ぶ。
石本建築事務所を経て、
2000年に株式会社ブルースタジオに参画し、専務取締役に就任した。
- 株式会社 ブルースタジオ
所在地/東京都中野区東中野1-55-4 大島ビル第2別館
TEL/03-5332-9920
http://www.bluestudio.jp
1998年、デザイン会社として設立。2000年からリノベーション事業を始動。個人宅から商業施設まで幅広く手がけ、定評を得る。
広告やデザインの分野に身を置く代表・大地山博氏と、
建築設計や不動産のバックグラウンドを持つ専務・大島芳彦氏のスキルを生かし、
「建築設計(=モノ)」「広告(=コト)」「不動産(=ジカン)」の一貫したサービスを提供している。