デザイン力とBIM技術のタッグで、カフェのような不動産店舗が完成。開業後の集客も予想を超える結果に
アパマンショップ 高品ハウジング西千葉店
「クライアントの価値創造への貢献」「クリエイターの生涯価値の向上」を事業コンセプトとする、クリーク・アンド・リバー社(C&R)は、そのコンセプトを体現する活動の一つとして、建築プロデュース事業を展開。同社に登録した設計事務所、建築士などと建築プロジェクトの的確なマッチングを図り、双方の価値を最大限に高める取り組みである。その第2号竣工案件としてJR西千葉駅前に「アパマンショップ高品ハウジング西千葉店」が新装オープン。施主のニーズは、駅前にある千葉大学の学生にも親しんでもらえるような、カフェのような店舗。その狙いは予想を超え、竣工後の集客は予想の2倍以上に増加した。本物件を担当した建築士の古川明久氏、新野裕之氏、C&R社建築事業部・建築プロデューサーの松葉力氏に、完成までのプロセスと意義や成果を聞いた。
BIMを上手に生かし、スピードアップを図る
施主の高品ハウジングは、千葉県内に8拠点を展開し、不動産の売買や賃貸の仲介を手がけている不動産会社だ。
「高品ハウジングの社長から『西千葉店が入居しているビルの路面店の店舗が空いたので移転したい。内装工事の相談に乗ってほしい』と連絡をいただき、このプロジェクトがスタートしました」とC&R社の松葉氏は説明する。
高品ハウジングの要望は、目の前にある千葉大学の学生に気軽に立ち寄ってもらえるカフェふうの店にしたい、というもの。また、オープン希望日までの期間が短く、コンペを行う時間がないからと、設計を担う建築士はC&R社の指名に任された。「これも日頃の信頼関係の賜物」と言う松葉氏は、登録している建築士の中から、斬新な商業店舗設計を得意とし、照明デザインにも明るい古川氏と、BIMに強い新野氏をアサインした。
「BIM活用で、施主へのデザインの確認がより的確に行え、スピードアップも図ることができます。また、設計データをストックできるので、多店舗展開するプロジェクトには有効と考えました。施主からはBIMのオーダーはありませんでしたが、当社として最適と考えた座組をしました」(松葉氏)
NYテイストと北欧テイストを提案
古川氏、新野氏の両名は、さっそくプランを出し合い、施主とイメージを固めるための資料を用意。施主を交え徐々にプランを絞り込み、最終のプレゼンテーションでは2案を提出した。
「A案は我々が『ニューヨークスタイル』と呼ぶ、アンティーク系の材料を用いたシックなイメージ。B案は『北欧モダンスタイル』と呼ぶ、白をベースにパステルカラーをアクセントに加えたポップなイメージです。いずれも、〝入りたくなる不動産店〞を目指し、外から明るい内部を視認できるよう窓を大きく、店内はイベントにも使えるようオープンスペースを広く取りました」(古川氏)
最終的に、施主の要望で両案を折衷する形に落ち着いた。一連のプロセスで、BIMが大いに威力を発揮する。
「床材などの材質まで取り込んで確認してもらうことができるので『完成形がとてもイメージしやすい』と好評でした。絵的なパースと違ってゴマカシが効かないので、施主とのやり取りを精緻にできるメリットも大きいと思います」(新野氏)
両名のアサインから3カ月強というスピードで、新店舗は竣工した。
「『カフェですか?』と間違って入ってきた学生もいたそう(笑)。想像以上の効果だとご満足いただけたようです」とは、古川氏、新野氏。「新装オープン後の予想を上回る集客効果に、施主から、『多店舗化の際は、またこのフォーメーションで』とお話しいただいています」と松葉氏は手応えを教えてくれた。
- 古川明久(左)
1997年、芝浦工業大学工学部
建築学科(卒業設計で最優秀賞
受賞)卒業後、プランテック総合
計画事務所勤務を経て、2002年
に独立しスペースクルーズ設立。
音楽イベントの主催やNPOの運
営にも携わり、デザインは建築から
店舗、ダンスクラブまで多岐にわた
る。一級建築士。新潟観光特使。
- 新野裕之(右)
1996年、明治大学理工学部建
築学科修士課程修了後、南條
設計室に勤務。2000年、ハーバ
ード大学大学院デザイン学部建
築・都市デザイン学科修了。ラフ
ァエルヴィニョーリ建築事務所勤
務を経て、03年、新野裕之建築
設計を設立。明治大学建築学
科兼任講師。一級建築士。