アジアをフィールドに活躍するホスピタリティ施設設計のプロ集団
株式会社観光企画設計社 東京本社 設計本部
“三方よし”を哲学に多くのホテルを設計
ホテルオークラ東京の建築設計を指揮した柴田陽三氏による観光企画設計社の創業は、今から53年前のこと。以来同社は、シティホテル、リゾートホテルタイムシェアリングホテルなどあらゆるホテルジャンルの仕事を手がけてきた。
なかでも国際的ホテルチェーンとのかかわりは深く、国内海外ほぼ同数のトータル220件を超えるラグジュアリーホテル作品がある。日本人による海外ホテル設計の先駆といえる。
同社の特徴は第一にその事業形態にある。ホテルの企画、建築計画・設計、インテリアデザインの各部門を自社内に擁し、一つの大規模プロジェクトの設計を1社で担うことができる。
企画、コンサルタント、建築家、インテリアデザイナーなどそれぞれの業務範囲が異なるため、世界的に見てもそれらの業務は別会社が手がけるのが一般的。しかし、取締役常務執行役員の清野修平氏は「それは本当の意味でクライアント・インタレスト・ファースト(CIF)とは呼べない」と語る。
「私たちは一つ屋根の下で、全部門が喧々諤々議論して、クライアントが本当に欲しているものをスピーディに一つのパッケージとして提案できる。過去53年にわたる部門別設計ノウハウ世界のホテル運営会社の方々とのお付き合いがあり、ホテル全体をとらえて価値をクライアントに提案してきました。それこそが匠の技、組織としての職人技だと、私たちが誇りにしているポリシーです」
創業期から変わらぬフィロソフィーの一つに“三方よし”(買い手よし、売り手よし、世間よし)がある。すなわち、ホテル事業者、運営者、ゲストが満足できる設計を提案するということ。KKSgroupが守り続ける永遠の社訓である。
- アジアへの進出をより加速させていく
アジアへの進出をより加速させていく
現地採用も「建築、インテリアにかかわらず、ホテルデザインのプロになるためには、オン・ザ・ジョブを通じた経験が絶対に欠かせません。ホテルは日常から離れた“ハレ”の場所ですので、その設計には絶えずイノベーティブな提案が求められます。そして、クライアントの期待を超える提案をするためには、高いコミュニケーション能力とフレッシュな感性、さらにホテル運営上の多くのルールを正しく理解しておく必要があるのです」
海外勤務を希望する人材も歓迎している。現在、同社は東京と香港、シンガポール、セブに拠点を置き、海外ホテル設計は46年の歴史を持つ。現地採用も行っているが、東京から海外事務所へ出向するチャンスは多いという。「海外プロジェクトでは、海外大手事務所との競合が年々激しくなっています。3Dモデリングによる3次元プレゼンをスピーディに行える人材を増やしていくことも、今後の課題といえますね」
人材確保・育成と業務のスピードアップに注力しながら見据えているのは、さらなる海外マーケットの拡大だ。ASEAN諸国の経済発展がさらに加速し中間所得層が増加していくとアッパー・ミドルクラスのホテル需要は爆発的に増えることになるだろう。「これまで手がけてきた様々なホテルカテゴリーの設計経験を、新マーケットにどう提供していくか。さらなる挑戦が楽しみでならない」と清野氏は言う。最後に、都市、リゾートの両面で培ってきた普遍性あるホテルづくりのスキルとノウハウを、アジア並びにASEAN諸国へ提案していくための戦略を聞いた。
「つまり、ホテルのハード面のみならず、ソフト面からもしっかり携わっていくということ。特に中国では健康志向が顕著になっており、スキーや温泉保養事業が成長しています。ソフトを理解しながらハードを調整する。これも当社が企画、計画、建築設計、インテリア設計を一気通貫できることからくる強みです。今後はさらに、インドネシア、べトナム、ミャンマーなどの案件を増やしながら、次代への成長につなげていきたいと思っています」
- 取締役常務執行役員 清野修平
Shuhei Kino 1982年、武蔵工業大学工学部建築学科卒業後、株式会社観光企画設計社入社。
ラグジュアリーホテル設計のプロとして、国内外の大規模複合開発、大規模リゾート、
タイムシェアリングホテルなど、多くのホテルジャンルの計画・設計を担当。
主な受賞作品に旧喜瀬別邸(現リッツカールトン沖縄)など。