建築と不動産、業界間の分断された業務をつなぎ、新たな価値を創造する
高橋寿太郎
二人三脚で建築家のお助け部隊に
そう考えた高橋氏は2011年に独立し、創造系不動産を創業。あらためて「建築と不動産のあいだを追究する」というビジョンを掲げた。また建築家と不動産コンサルの二人三脚で行う建物づくりを「VFRDCM」フロー(Vision, Finance, Realestate, Design, Construction,Management)として整理、明文化している。
すなわち、建て主のライフプランを建築家と不動産コンサルが一緒になってサポートする。ファイナンスや土地探しは不動産コンサルの作業割合が多くなるが建築家も手伝う。建物の設計や工事になると建築家の作業が主になり、不動産コンサルがローンや登記を陰ながら支える。
「かつては土地取得までが不動産の仕事、そこからは建築家の仕事と分断されていて、建て主に対するサポートも分断されていました」と高橋氏は言う。
これを一貫したサポートに組み換えるため、それこそ土地探しから必ず建築家に付き添ってもらっている。土地には多くの〝錯覚〞があり、その錯覚から顧客を救い出すには、建築家の能力が欠かせない。
「例えば、南北に2つの区画が並んでいたとします。南側は日当たりがよく地価が高い、北側は日陰でジメジメしている。土地だけ見たら、南側を選ぶ建て主が95%です。しかし建築家には北側のほうが日当たりのいい家が建つとわかる。南側の家は、北側の家の影に大きく隠れてしまうからです。土地探しから建築家が同行していれば、そんなミステイクをするお客さまを救うことができるんです」
同社はさながら「建築家のお助け部隊」だ。建築家から依頼されるケースが大半。ここに依頼すれば不動産のこともローンのことも税金のことも、ファイナンシャルプランのことも、相続も不動産収支計算もサポートしてもらえる。そう認知している顧客が増えているという。
メンバーは現在、高橋氏を含めて6名。全員が建築アトリエ系事務所出身である。社員には「建築をずっとやってきたけど矛盾や壁にぶち当たった、という人間に不動産をゼロから勉強してもらいたい」。それが高橋氏の願いだ。建築と不動産のあいだの仕事に本気で取り組むプロフェッショナルが100人生まれれば、日本の家づくりは変わると彼は信じている。
「いつの時代も建築家が人の生活・活動拠点をつくってきました。そういった意味でも建築家は『なんでもできる』存在であるということを思い出してほしいです。私たち創造系不動産は建築家の黒子にすぎません。現代においては、建築家が統括する仕事のなかには、土地探しも住宅ローンも入っている。そういうことも『自分にはできる』と言い切ってもらえるよう、これからも走り続けます」
- 高橋寿太郎
たかはし・じゅたろう/1975年、大阪市生まれ。
京都工芸繊維大学 岸和郎研究室 修士課程修了。
2000年、古市徹雄都市建築研究所入所。
07年、不動産総合会社にて分譲開発、賃貸管理、営業、コンサルティングなど、様々な業務を経験。
11年、創造系不動産株式会社を設立。16年、東京建築士会「これからの建築士賞」受賞。
著書『建築と不動産のあいだ』(学芸出版社)。
一級建築士。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー。
- 創造系不動産株式会社
所在地/東京都港区赤坂6-6-19-205
TEL/03-6277-6653
http://www.souzou-kei.com/
2011年11月創業。建築家と不動産コンサルが協働する「VFRDCM」フローを武器に、不動産の仲介業務、建築家・デザイナーとのコラボレーション案件を多く手がける。ライフプランの相談、ファイナンシャルプランニング、土地探し、設計、工事、完成後の登記や引っ越しなど、家づくりの全フェーズを一貫してサポートする。創業の理念は「建設と不動産のあいだを追究する」こと。