人と組織が抱えるBIMのニーズを全方位型サービスで解決していく
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による業務フローの変革が、
世界の建設業界に浸透しつつある。
この新たな3次元モデルを駆使すれば、設計と施工、ファシリティマネジメントの
情報交換が今以上にスムーズに行え、工期の大幅な短縮も可能となる。
ただし、我が国の現状は まだ〝過渡期〞といわざるを得ない。
クリーク・アンド・リバー社(C&R社)建築事業部が展開するBIM事業は、
業界のインフラ発展にどう寄与していくのか。
その〝解〞を、組織設計事務所と建設会社で活躍するBIMの先駆者とともに探った。
建築業界全体で、普及の道を探るべき
安井 BIMを社内に浸透させるため、メルクマールを策定しました。何をもって「昨年のBIM活用は30%だったが、今年は50%に上がった」と判断するかの基準で。3Dセンター室で作成したロードマップを社内で共有し、時間の経過とともに現状を確認し合っています。「NS(日建設計) BIM1・0」は、設計チームが平面検討以外に形態検討、環境シミュレーションなどにデジタルツールを1つ使うという簡単なBIMプロジェクト。「2・0」は、BIMと複数のデジタルツールを使った強化型、「3・0」は、情報とシミュレーションを統合した理想的なBIMで、その先にある「X」は、ファシリティマネジメントやライフサイクルデザインにBIMを応用できたフェーズです。現状、当社は「3・0」のプロジェクトが増えてきました。
鈴木 今、公共事業のコンペでも〝デザインビルド〞が増えています。BIMの普及はもう止まらないでしょうし、設計事務所とゼネコンの関係も変わっていかざるを得ないのでは?
安井 国内では、〝設計BIM〞と〝施工BIM〞が分かれるぎこちない状態が続いていますが、それをスムーズにつなぐための明確な解はまだ見つかっていません。欧米のように組織設計事務所が施工図まで手がけることも現状では難しい。設計事務所にとっては、フロントローディングとなってもフィーが増えるわけでもないし、責任が持てるわけでもないですから。であれば、BIMは、最終的に施工者や施主のためのツールなのでしょうか。BIMの普及により、日本の設計事務所は潰れるか、ゼネコンに統合されるしかないのでしょうか。私自身は、共存の道が必ず見つかると思っています。
綱川 契約の仕組みを明確化することで解決できるかもしれません。デザインビルドといっても、最初から設計事務所に入ってもらって進めるゼネコンもやはり多いですし。
安井 設計事務所の上層部は、「BIMが普及していくと、ゼネコンに仕事が取られるのでは」と思っている方も多い。そうではなく、業界が変化し、役割分担や仕事の仕方を変えていく必要があるということ。大事なのは、この変化への対応を業界全体で考えるということです。
島谷 その変化を正しい方向に導くためのお手伝いも、ぜひさせていただきたいと思います。では最後に、当社のBIM事業に期待されていることを教えてもらえますでしょうか。
安井 大学のカリキュラムが旧来と変わらず、まだBIM教育が取り込まれていない大学が多いなか、C&R社にその人材育成を手がけていただけるのはありがたいですね。それと、BIM以外にも新しいことをやりたい時に社内にそのスペシャリティを持つ人材がいないことがよくあります。そんな時にC&R社に相談すると様々なプロフェッショナルとつながる。そういう意味で、私は〝世界との接点〞だと思っています(笑)。引き続き連携できればと思っています。
綱川 まだまだBIMについては、正確で有益な情報が少ないと感じています。御社のマガジンなどを使ってどんどん正しい情報を広めていってほしい。これからもぜひ、BIMの正しい普及に協力してください。
島谷 我々はBIM事業を軸としながら、建築業界にとっての〝ハブ〞になりたいと思っています。これからもぜひご利用くださいますよう、お願いいたします。本日は本当にありがとうございました。
- 安井謙介(左)
株式会社日建設計
設計部門 3Dセンター室長代理
BIMマネージャー2002年、東京大学大学院新領域創成科学研究科修了後、
オランダのデルフト工科大学へ留学。
03年、erick vanegeraat (オランダ)勤務。
04年の帰国後、株式会社松田平田設計入社。
総合設計室副主任を務める。
14年、株式会社日建設計入社。
一級建築士。
- 綱川隆司(右)
前田建設工業株式会社
建築事業本部 ソリューション推進設計部
BIMマネージメントセンター長1993年、早稲田大学理工学部建築学科卒業後、
前田建設工業株式会社に入社。
2001年より、3次元CADによる建築設計に従事。
BIMを活用した仮想コンペ「Build Live(IAI日本主催)」に
チーム「SKUNK WORKS」として毎年参加し、14年は最優秀賞・BuildingSmart大賞を受賞。
15年、社長賞受賞。
一級建築士。