欧州と日本の高級ブランドが主な顧客。クラフトマンシップにこだわりながら、結果を約束する提案とデザイン力が強み
TEAM IWAKIRI JAPAN
同社はイタリアと日本にオフィスを構え、商業施設や住宅、ホテルなどの建築設計、インテリア設計、家具デザインなど、幅広い業務を手がけている。特に多いのは、自動車メーカーの店舗や修理工場、ショールームに関する仕事だ。その割合は全案件の約8割を占めるという。
自動車メーカーとの縁は、代表の岩切茂氏が丹下健三・都市・建築設計研究所に勤めていた時代、イタリアで築いたもの。「ドイツの大手自動車メーカーの案件を長く担当し、自動車業界を取り巻く様々な人たちとつながりができた」という岩切氏。起業後も複数の大手自動車メーカーから声がかかった。
なぜ、同社は少人数の建築設計事務所でありながら、名だたる顧客から選ばれるのか。その秘密は、CI(コーポレート・アイデンティティー)をはじめとしたブランディング・コンサルテーションを行い、顧客に「設計+α」の付加価値を提供しようとする姿勢にある。
「例えば、オフィスビルを手がけるなら、立地や環境だけでなく、ビルそのものの価値を高める様々な工夫を施します。単に建物を完成させるのではなく、いかにしてテナントを埋めていくかということまでを考え、提案するのです。それができる事務所はそれほど多くありません。私たちが期待されているのは、技術力よりもむしろブランディングなのだと思います」
こうしたブランドを大切にする考え方も、やはり岩切氏が丹下氏から受け継いだもの。「丹下先生ご自身が、ブランドそのもののような方でした」と岩切氏。周りからどんな評価を得ようと、建築に対するぶれない軸を持ち続ける丹下氏の姿勢から大きな影響を受けている。
「担当していた自動車メーカーの商品が超高級車だったことも大きい。設計する店舗にしても、ただ販売するだけでなく、その商品を求めて来店する方々を惹きつける場でなくてはなりません。だから、メーカーがどういうものづくりをしているのか、そのブランドについてどう考えているのか、深く勉強させてもらうことができた」と語る。
岩切氏がイタリアで起業したのは、「前職で築いた縁を生かせるというのもありますが、現地の職人の方々の素晴らしいクラフトマンシップに惚れ込んでいたことが何よりの理由」。その後、日本へと活躍の場を広げるが、当初は苦労することも多かったという。
「イタリアでは顧客と直にやり取りできたのに対し、日本では間に広告代理店が入ることが多い。顧客との意思疎通の工程が増えるほど、本質が見えにくくなることから、私は『顧客と直接やり取りできる仕事しかしない』と決めていたのです。最初はなかなか理解してもらえませんでしたが、継続して結果を出すことで少しずつ共感してくれる顧客が増えていきました」
同社が結果を出せる理由は、固定観念にとらわれない発想力にある。また、その発想力は圧倒的な経験値の高さがあるからこそ発揮できるものだ。
「私は、経験することの大切さを丹下先生から教わりました。入所当初、『お客さまから、サウジアラビアの王様が使うようなトイレをオーダーされたら、想像できますか?』と問われたのです。もちろん、未知の世界ですから、想像できるわけがありません。であれば、それに近い経験をするしかないと思い、借金をして、普段は泊まれないような超高級ホテルを泊まり歩きました。その経験は、今でも貴重な財産となっています」
同社には、岩切氏と同様に、一つでも多くの経験を得るために自ら行動できる仲間が集う。「分業を好み、自分の担当分の仕事しかしないようなタイプの人は馴染めない」と岩切氏。「逆に、うちで数年の経験を積み、評価されるスタッフは、他社からヘッドハンティングされることも多い」そうだ。
「一つの明確な目標に向かって突き進むというよりは、様々な出会いやチャレンジを繰り返すなかで新しい価値を生み出していくのが私たちのスタンス。そんな環境を一緒になって楽しめるデザイナーは大歓迎です」
- 株式会社TEAM IWAKIRI JAPAN
所在地/東京都渋谷区猿楽町10-1-204
TEL/03-3462-1713
2002年、イタリアにて起業。
03年、日本にて株式会社TEAM IWAKIRI JAPAN、
14年、株式会社TEAMIWAKIRI PRODUCTS設立。
Cappellini、Tecnoなどイタリア家具メーカーの国内代理店も展開
- 代表取締役社長 岩切茂(いわきり・しげる)
1986年、武蔵野美術大学建築学科卒業。
88~90年、イタリア政府給費留学(ヴェネツィア建築大学、ミラノ工科大学)。
91年、丹下健三・都市・建築設計研究所入所。
2002年、独立。イタリアにて、Team Iwakiri s.r.l(. 有限会社)設立。
03年、株式会社TEAM IWAKIRI JAPAN設立。
東京、大阪、ローマに拠点を持ち、グローバルな活動を続けている。