建築家の思いを支え、常に新しい挑戦を志向。ニーズをはるかに上回る成果を導く仕事が喜び
オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド
独自の“技”で建築業界をリードする組織を紹介する本企画に、今回ご登場願うのは、アラップの4名のエンジニアたちだ。福岡県飯塚市に、とてもシンプルな外観の寺院の納骨堂が建てられたのは、2014年夏のこと。だがそこには、これからの建築に一石を投じるであろう、驚くべき技術が秘められていた。キーワードは“風”、そして“光”である。
特定の技術にとらわれず、最高品質を追求
アラップは、ロンドンに本社を置き、世界約40カ国に展開する、総合的な建設エンジニアリング・コンサルティング企業だ。東京にオフィスが設けられたのは1989年で、国内で構造デザイン、設備・環境エンジニアリング、プロジェクトマネジメント、ファサードエンジニアリングの4分野を軸にサービスを提供している。
ファサードエンジニア(アソシエイト)の佐々木仁氏は、「創業者のサー・オーヴ・アラップは、『会社のやるベきことは、質を追求して社会に貢献すること。そのために、特定の技術分野に限らない、トータルアーキテクチャーをつくりたい』と言っていたそうです。その言葉どおり、建築設計に関する様々な技術を揃え、ニーズがあれば世界のどこにでも飛んで行って、必要なパートナーと組んで仕事をする、というかたちで発展してきた会社なのです」と語る。
「ほかの事務所との違いを聞かれた時に、『技術力が優れています』というのは、必ずしも答えではないと思っています。あるエンジニアに言われたことがあるんですよ。『構造の人間が設備を語り、設備がデザインの話をする。それが“いい打ち合わせ”なのだ』と。個々が高い専門性を持ちながら、そこに壁などをつくらずに、あくまでも高品質のサービスを提供するために力を尽くす。それが、当社の大事なカルチャーなんですよ」
- ゼネコンの設計部を経て2000年に同社に転職した
ゼネコンの設計部を経て2000年に同社に転職した構造エンジニア(アソシエイト)の笹谷真通氏は、入社当時の東京事務所の雰囲気を、「一人ひとりが高いモチベーションを持ち、ある種のライバル心を持って仕事をしていると感じました」と振り返る。
「社員は、まだ20人弱くらいで、大半が構造エンジニアという時代。そんななか、上司は業界でまだ4年しか経験のない私を“即戦力”として扱い、いろんなチャンスをくれました。会社自体も、徐々に設備関係などの機能を強化し、佐々木が言ったような組織力で勝負する陣容が整いました。ここまで、会社の歴史に重ね合わせて、自らも成長してこられたように思います」
環境設備エンジニアのリーダー、菅健太郎氏も組織事務所からの転入組。「アラップに来たのは、海外で仕事をすることへの憧れがあったからなんですよ。いつか、世界で自分の力を試してみたいと。実際、海外のプロジェクトにも参加し、いろんな経験を積むことができました」
「納骨堂プロジェクト」には、このほか大学院で“振動工学”を学んだ構造エンジニアの奥村祐介氏が加わった。「日本の免震技術は世界一です。やはり、それを国際的に発信できないかという思いがあって、グローバル展開するアラップを就職先に選びました。はっきり言って、免震という切り口だけでは、大手のゼネコンなどと差別化ができません。そこで、よりデザインに寄り添った提案というのが、当社では求められます。『免震のためにこうしなければ』が他社なら、『地震力が減れば、こんなデザインが可能ですよ』というスタンスで仕事をするのが、自分の使命だと考えています」
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- 電気を使わず、明るく涼しい建物を――。その要望に応えた技術
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設立 1989年5月 代表者 彦根茂 所在地 東京都渋谷区桜丘町24-4 東武富士ビル3階