世界をリードするホスピタリティデザインの
本流をくみ、日本からイノベーションを――。
グローバル事務所の一角として存在感を示す
HBA/ハーシュ・べドナー・アソシエイツ
世界に名だたるハイブランド・ホテルのデザインを手がけるHBA(ハーシュ・ベドナー・アソシエイツ)は、52年前に米国ロサンゼルスで活動をスタート。現在は世界21都市に拠点を置き、スタッフ数は1800名を超えている。HBA東京オフィスは、ロサンゼルス本社の支店的役割から始まり、2012年に法人化され正式な日本の拠点に。国内外の約30のホテルインテリア、ホスピタリティデザインなどの案件が常時進行している。
「西欧文化のなかで生まれたホテルというホスピタリティの本質を、日本に取り入れることを当社の理念としています」
と代表の若狭明宏氏は語る。HBAは、ブランディング、各分野のコンサルティングなど様々なグループ会社を抱えている。〝ワンストップショッピング〞を要望する顧客のために、国をまたいだ他都市の各事務所とも連携しながら、ベストなプロポーザルを導き出すのがモットーだ。
昨今、顧客が考えるホテルの概念が変わりつつあり、それに応じた新しいサービスやデザインが求められている。また、平均顧客単価を上げるための要望がよりシビアになってもいる。例えば、同社が最近手がけた沖縄のANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾートでは、クラブラウンジを改装することにより、1フロアだったクラブフロアを3フロアに広げ、平均顧客単価を高めることに成功している。
「ホテルのデザインとビジネスは、密接に関係しています。資金を投じてつくるものは、利益を生まねば意味がない。それができないデザインはいいデザインとはいえません。自分のエゴを押しとおすのはアーティスト。アーティストは自分のやりたいことをやり、作品を気に入ってくれた人が買えばいい。しかし、デザイナーは第三者から使命を与えられて、それを解決、達成
することが仕事なのです」
最近ではラグジュアリーホテルとは一線を画した「ライフスタイルホテル」という形態が日本にも誕生し始めている。この新しい潮流には、どう向き合っているのだろうか。
「〝ライフスタイル〞の定義は抽象的なものなので、私たちなりに解釈し、最適なコンセプトとストーリー性をつくり出しま
す。私たちの〝商品〞は基本的に実態のないものと時間。提案に価値があると思っていただくために、何より裏づけとなるコンセプトを重視しています」
現在、東京オフィスのスタッフは18名。ほとんどが海外での実務経験を有し、英語も堪能だ。求める人材は基本的に即戦力が、ポートフォリオだけを見て判断することはしない。
「経験やセンスは後から詰め込めますが、仕事に対する考え方や姿勢は持って生まれたもの。教えることが難しいのです」
面接の会話の中でその人の本質を見極めるために、若狭氏はこのような質問をするという。
「3年後、5年後、10年後のビジョンをどう考えているか、ですね。3年後は必ず達成すべき目標、5年後は頑張ればなん
とかなる目標。そして10年後は夢。私は目標に日付をつけないと、実のある行動はできないと考えています。自分の人生に
責任を持っている人と一緒に働きたいと思っています」
今、若狭氏は東京オフィスの未来をどう展望しているのか。
「まず、この組織でホテル新築1棟をしっかり完成させることが一つの目標です。大きな建築をゼロからつくり上げた達成感は、一人ひとりの自信となるでしょう。すでに新築案件が動いていますので、これはほぼ達成できる見込み。5年後、その自信がブレイクスルーを生み、さらにハイブランドの仕事が増えていくことを期待しています」
当然だが、外資系ホテルは、外国人デザイナーがデザインするケースが多い。しかし、日本国内のホテルであれば、日本発のデザインで旅行者を迎えたい。
「HBA東京は外資系ですが、私たちがつくる〝日本のデザイン〞として発信していきたい。10年後、世界中から、『HBA東京に仕事を依頼したい』といった声がたくさん届くよう、この組織を成長させていきます」
- HBA株式会社 代表取締役 若狭明宏(わかさ・あきひろ)
カルフォルニア州立大学卒業後、
6年間ホテルデザインの実務経験を経て、
米国A W De s i g nStudioを設立。
米国時代には、デザイナーとして5つ星ホテル、
レストラン、スパ、客室などホスピタリティデザイン全般に携わる。
帰国後、デザイン事務所DESIGNSTUDIO SPINに入社。2012年、HBA東京代表に就任。
- 株式会社HBA
所在地/東京都港区元麻布3-4-23
TEL/03-5447-6121
http://www.hba.com/
HBAの日本オフィスとして2012年に法人化。国内外のハイブランド・ホテルや高級レジデンスなどの
新築・改修工事におけるインテリアデザイン、
ホスピタリティデザインを手がけている。