アルメニア、ジョージア、トルコ東部に
分布する歴史建築の調査研究を進め、
新たな歴史的価値と保存対策を探究
東京工業大学 環境・社会理工学院 建築学系 藤田研究室
フィールドワークは〝狩猟的研究〞
学生たちには「失敗や無駄を恐れるな」と声をかける。
膨大な史料をまとめる際、時に無駄にも思える途方もない作業に直面するが、最近の学生の傾向として、失敗と無駄を避け、簡単に得られる結果だけで満足するきらいがあると感じる。
「学生にとっての研究は、失敗しても自分で責任がとれる、社会人になる前の最後のチャンスです。研究テーマを与えることはせず、学生に自由に考えさせています。失敗を恐れずに思い切りやってほしい」
藤田准教授の部屋には次のフィールド調査に出かけるための道具が並べられていた。
建築史の研究は、史料に基づく文献研究と、実物からデータを得るフィールド研究に分けられる。文献的な研究は〝農耕的〞と恩師に教えられた。
史料に向き合い、思考を巡らし、花咲くのを待つ。一方、フィールド研究は〝狩猟的〞だ。
「建築を現場で理解する眼と嗅覚を身につけよ」と修士課程からの20年にわたる調査のなかで鍛えられたという。
「フィールドに立って、昔の人がその建築を建てた思いに触れられたと感じる瞬間がこの研究の醍醐味です。その醍醐味を学生にも伝えていきたい」
どんな対象でもフィールドに出て調査し、体験的に考える。藤田准教授は間違いなく〝狩りをする〞研究者なのだ。
- 准教授 博士(工学) 藤田康仁
ふじた・やすひと
1997年、東京工業大学建築学科卒業。
99年、東京工業大学大学院人間環境システム専攻修士課程修了。
2003年、イタリア・ローマ大学ラ・サピエンツァ交換留学。
05年、東京工業大学大学院人間環境システム専攻博士後期課程修了。
環境造形学園ICSカレッジオブアーツ講師、
東京工業大学大学院総合理工学研究科助手、助教を経て、
15年8月より現職。