既成概念の先にある新たな価値観を求め、”一本の線”をひく
鬼木孝一郎
連立方程式の解答にデザインを見いだす
鬼木氏はクライアントから提示された条件を「たとえるなら連立方程式を解くような感覚」でデザインするのだという。
「条件を羅列すると矛盾が生まれることが多いのですが、方程式のように条件を並べ、最後にデザインコンセプトや形を加えると、その式がきれいに解けるようなことがあります。解答パターンを脳内でシミュレーションしていくなかで、解答の一つがしっくりはまった時に〝一本の線〞が決まるのです」
一本一本の線に真の意味があるため、余計な線を加える必要がないのだ。当然、意味のない装飾的なものも排除されていく。
「自分がその空間を実際に見てみたいと心から思えた瞬間に、この案しかないと確信します」
これまでに物販店舗を多く手がけてきた鬼木氏だが、EC業態が加速する時代の店舗のあり方に関心を抱いている。
「今後、物販店舗はものを売るだけでは生き残れませんが、そこでしかできない体験をプラスすることで新しい価値観を生み出せると思います。単に空間を設計するのではなく、〝業際〞を超えた専門家の方々と、既成概念を打ち壊す企画を考えていくことができれば面白いですね」
- 鬼木孝一郎
おにき・こういちろう
1977年、東京都生まれ。早稲田大学大学院修了後、株式会社日建設計勤務。
その後、有限会社nendo入社。
10年間にわたりチーフディレクターとして国内外の空間デザインを手がける。
JCD賞金賞、JID賞大賞など、受賞歴多数。
2015年に独立し、鬼木デザインスタジオ設立。
- 株式会社鬼木デザインスタジオ
所在地/東京都目黒区駒場1-28-1-404
TEL/03-6804-7389
http://oniki-design-studio.com/