生活空間に生じる音・振動を研究し、 よりよい住環境づくりに貢献したい。 取り組むべき課題はまだまだある
日本大学 理工学部建築学科 建築音響研究室 冨田研究室
逆転の発想で突破口を見いだす
建築学会では、居住性から見た環境振動の評価規準ができたばかりだ。さらなる規準整備を見据え、冨田教授はより多くの現場でのデータ計測を行っている。交通量の激しい道路前などの住宅を訪問しているが、一般住宅で調査を行う場合に障壁となるのが床材だ。計測に使う振動ピックアップは板張りなどの固い床での計測が条件であり、畳やカーペットでは共振が原因で正確な数値が得られない。硬いアルミ板を敷き、計測範囲を少しでも増やす対策がとられてきたが、根本的な解決ではない。
■注目の研究
冨田教授は逆の発想から、柔らかい防振ゴムを載せ、その上に計測器を設置。あらかじめ固い床に同じ設置方法で測定した数値により、カーペット上で計測した値を補正することで、畳やカーペット上でもほぼ正確な値が得られるようになったという。柔軟な発想と行動力が冨田教授の研究を推し進めている。
「建物の音や振動の研究については、まだ解決すべきことが山積しています。今後も生活空間のよりよい快適性を実現するために、現状データ蓄積と様々な創意工夫の両面で研究を続け、貢献したい。世界の建築業界から求められる成果をかたちにすることが目標です」
- 教授 博士(工学)冨田隆太
教授 博士(工学)とみた・りゅうた
1999年、日本大学理工学部建築学科卒業。
2001年、同大学大学院理工学研究科建築学専攻終了。同大学理工学部助手。
2007年、同大にて博士取得。
その後、助教、准教授を経て、18年に教授。
共著に『建築物の振動に関する居住性能評価規準・同解説』(丸善出版)、
『基礎教材 建築環境工学』(井上書院)など。
一級建築士。