乃村の総合力を生かし、 斬新な保育施設を提案。 日本の未来を担う 子供たちの育成に貢献技
乃村工藝社 NOMURA Co., Ltd
創業127年。四国・高松の芝居小屋での大道具制作から始まった乃村工藝社は、以来、仕事の範囲を着実に広げ、百貨店やショールーム、博物館、科学館など、各種施設における内装・展示の企画、デザイン・設計、制作・施工、運営管理など、時代に求められる〝空間づくり〞のノウハウを蓄積させてきた。そんな同社が保育施設を扱う専門チームを結成したのは2014年のこと。その名称は「全国こども施設開設支援プロジェクト」。同プロジェクト誕生の経緯、狙いを聞いた。
札幌で立ち上がった乃村工藝社初の保育施設専門チーム
同プロジェクトでリーダーを務める松田裕介氏はその当時、北海道支店に勤務していた。
友人の紹介で保育園を視察した際に感じたことは、子供目線に立った施設が少ないということ。施設の空間自体がとても小さく感じ、しかも屋外は冬になるとマイナス10度に達する。これでは子供が存分に遊べない。
「当社のディティールへのこだわりや、ものづくりの考え方を取り入れれば、もっといい〝子供空間〞がつくれるのではないか、と直感しました」(松田氏)
こうした松田氏の実体験から「冬でも遊べる保育園」というコンセプトが生まれた。松田氏が最初に手がけた保育施設は、認可保育所「アートチャイルドケア札幌元町」。限られたスペースの中で、子供が冬でも楽しめる工夫を凝らし、照明・建具・厨房に至るまで子供目線での空間構成を施した。すると、待機児童問題の影響もあり、同施設の評判を聞いた顧客からの相談・受注が相次いだ。そして、松田氏をリーダーとする保育施設専門のチームが札幌に立ち上がる。
「本社からすれば、最初は『支店の若造が珍しい仕事をとってきたな』という感じだったのだと思います。当社では実績が多いとはいえない分野でしたから」(松田氏)
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17年に松田氏が東京へ異動すると、同じタイミングで内閣府の主導による「企業主導型保育事業」が本格的にスタートした。これは企業が従業員のために設置した保育施設に対し、施設の整備費と運営費を助成するもの。
もとより同社は主に企業を顧客とし、ショールームの演出、オフィス空間などを数多く手がけてきた。企業主導型保育所事業の顧客と重なるというわけだ。そして、札幌から始まったプロジェクトは、このタイミングで日本全国へと拡大を始めた。
一例が「全日本空輸企業主導型保育園設置プロジェクト」だ。空港を思わせるデザインのラウンジや、「今日、お父さんはどこにいるの?」など、子供との会話の種になる世界地図。施設内には様々な〝全日空らしい世界観〞が表現されている。チームでデザイナーを務めている杉本渉氏は言う。
「必ずしも企業イメージを全面に出すほうがいいとは限りません。施主からヒアリングをし、そこで拾い集めた企業の〝色〞や『こんな子供に育ってほしい』といった意向をデザインに落とし込んでいけたらと思っています。全日空の案件では、『お父さんやお母さんはこんな会社で働いている』と子供に知ってもらいたいという意向が強かったため、空港の雰囲気を取り込んだデザインになりました」
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- 顧客に寄り添う姿勢は企画から運営管理まで一貫して担うからこそ
- 株式会社乃村工藝社
NOMURA Co., Ltd 創業/1892年3月15日
代表者/代表取締役会長 渡辺 勝
代表取締役社長 榎本修次
所在地/東京都港区台場2-3-4
https://www.nomurakougei.co.jp/
- 松田 裕介/Yusuke Matsuda
2007年、立教大学法学部卒業後、乃村工藝社に入社。
本社勤務後、5年間の北海道支店を経て、
全国こども施設開設支援プロジェクトを立ち上げる。
プロジェクトリーダー。
- 杉本 渉/Wataru Sugimoto
2014年、東京都市大学大学院建築学専攻修了後、
三上建築事務所意匠設計担当を経て、乃村工藝社に入社。
クリエィティブ本部デザイナー。
- 高田 和哉/Kazuya Takata
2018年、香川大学経済学部経済学科卒業後、乃村工藝社に入社。
第三事業本部営業1部1課プロジェクトマネジメント担当。
- 大橋 史歩/Shiho Ohashi
2012年、東京国際大学国際関係学部卒業後、
オフィスの設計会社など勤務を経て、乃村工藝社に入社。
第三事業本部営業1部1課開発営業担当。