“確かな建築”で、都市の未来をより豊かに。 利用者が喜ぶ空間をつくり続けることが使命
日総建
グループ化により新たな業務領域に挑む
1963年、旧日本電信電話公社が全国の電話網整備に向けた大量の局舎建設の設計業務を担う建築設計部門として設立された日総建。2015年、建設技術研究所グループに参画後は、土木建設分野を専門とする同グループで建築分野の中核を担っている。
「局舎設計という特質上から、設立以来〝確かさを追求する設計姿勢〞を貫いてきました。さらに、建設技術研究所のグループに加わったことにより、互いが得意とする技術を相乗しながら、大きなシナジー効果を発揮できるようになりました」と、同社代表取締役社長の濵田幸一氏は語る。
土地の基盤整備から建築設計までをワンストップで提案できる体制が同グループの強みだ。18年に竣工した渋谷区幡ヶ谷の複合施設建設および防災公園整備計画は、まさにグループ化の効果を発揮したプロジェクトである。基本設計を同社が受託し、実施設計の段階で福祉施設・高齢者住宅・保育所の機能を持つ建築の設計を同社が、防災公園を含めた土木コンサルティングを建設技術研究所が担当した。
「建物と公園の相互の敷地にまたがるアプローチ空間を連続して整備し、保育所や地域包括センターからテラスを介して公園に直接アクセスできるように設計しました。建築と土木の両分野が、緊密に協働したからこそ実現したプロジェクトといえるでしょう」
さらに、企画・構想段階の発注者支援に加え、CMやPMも同社の新たな業務領域として捉えている。ちなみに、グループ化後に建設技術研究所とJVで手掛けた福島ロボットテストフィールド計画では、建築設計と建築施工管理のCMを同社が請け負っている。
質の高い建築の提供が業務の好循環を生む
近年、顧客から求められる要求が拡大してきており、建築設計事務所が対応すべき業務領域も多岐にわたるようになってきた。グループでカバーする技術領域の広さによりその対応が可能となり、グループ内での技術交流も盛んだ。
「社員一人ひとりが多様な能力を身につけたうえで、自分の得意な分野を見極め、そこに特化すれば、将来のキャリア選択の幅も広げられます。会社としてどんどん大きなチャレンジを続けているので、社員それぞれの経験値を超えた業務に直面することもあるかもしれません。その時点での技量では難しいことも、自分なりに受け止めて乗り越えられるような人材を育てたいと思っています」
現在、受注の約7割が公共建築であり、建築の用途は教育施設、健康増進施設、医療福祉施設、斎場、庁舎など多岐にわたる。また近年では、過去に設計した物件の改修や用途の見直しを含めたリノベーションも増加傾向だという。設立当初と求められる建築の方向性は大きく異なってきているが、〝確かな建築で、都市の未来をつくる〞という基本理念を追求する姿勢は不変だ。
「建物の細部にまで気を配る設計手法は、実務をとおして若手に継承するのが最も効果的です。そのうえで、仕様やディテールだけでなく、エラーやミスまでを含めてデータベース化し、社内で共有しています」
30年に向けた中長期ビジョンでは、現在約120名の社員を200人規模、年商目標を40億円と設定。目標達成のための方策として組織的な営業力の強化を掲げている。設計者として施主の要望を引き出す力や提案を実現させる力は営業に求められる能力と同じであり、それを質の高い建築としてかたちにし、利用者の満足を得ることが、必ず次の仕事へつながると考えている。
「時代と共に設計への要求が変化しても、引き継いできた理念が揺らがなければ、提供する建築もぶれません。多方面の要求に対応するため規模を拡大しながらも、〝確かな建築〞という理念を軸とし、高品質な建築をつくり続けたいと思います」
- 代表取締役社長 濵田 幸一
はまだ・こういち/
1983年、北海道大学工学部建築工学科卒業後、株式会社建設技術研究所入社。
東京本社都市システム部PFI・PPP室長、東京本社都市部次長などを経て、
2017年、管理本部付兼日総建取締役営業本部長。
19年、日総建代表取締役社長。
21年より、建設技術研究所執行役員も兼務。
- 株式会社日総建
東京都渋谷区幡ヶ谷1-34-14
http://www.nissoken.co.jp/1963年の設立以来、国内外の多くの建築プロジェクトに
おいて設計・監理および企画構想、維持管理、発注者支
援業務に携わる。建設技術研究所グループの一翼として、
建築分野の中核を担う。