人々の人生に新しい選択肢を――。 その可能性を建築の力で広げていく
一級建築士事務所 秋山立花 秋山怜史
明確な目標は定めず、目の前の課題に向かう
事務所の特色をアピールするために、自分の興味関心がどこにあるかを再考していた時に浮かんだのが、かねてから興味のあった社会課題の解決だ。子育てと仕事の両立は長く議論されているが、いまだに解決の糸口は見えていない。〝子育てのシェア〞というアイデアを会える限りの人に語って歩いた結果、母子支援のためのシェアハウスの仕事に携わることができた。しかし、ここで思わぬ壁に当たる。
「当初、一度仕事としてかかわることができれば、多くの母子支援シェアハウスの設計が舞い込むだろうと考えていました。しかし、シェアハウスの厳しい経営を成り立たせるにはイニシャルコストを極力下げる必要があるため、そこに設計料を乗せることが難しい」
それが課題解決を阻害するなら、設計は一旦脇に置くことに決め、考案した仕組みを広める側にシフトすることに。結果、同様のシェアハウスが増え始めたことから、シェアハウス用の不動産ポータルサイトを構築。経営の悩みを共有して解決を図るためのNPO組織も立ち上げた。これらの活動がメディアに多く取り上げられ、記事を読んだ人から、様々な相談が舞い込むようになる。それが少しずつ、設計の仕事にもつながっていったのだという。
この活動が広がるに伴い、医療やソーシャルセクターなど建築以外の研修にも積極的に参加。
「現在は地域包括ケアにも病院の建築顧問という立場でかかわらせていただいています。福祉や医療領域の方々と同じ専門用語で話せることが重宝がられているようです」
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現在手掛けている設計業務は年間10件ほど。当初は住宅と施設系が同程度の割合だったが、最近では保育園や自立援助ホームなど施設系の割合が増している。知識と経験の蓄積が、建築の幅を広げているのがうかがえる。
「ここ数年、年の終わりにはほぼ設定目標を超え、かつ想定外のことが起きているので、最近は明確な目標を定めなくなりました。それよりも今、目の前にある社会課題に取り組むことで、想像しているよりもはるかに面白いステージに上れる気がします。建築家には多様な可能性があるので、多様なタイプの建築家がいるのが豊かなことなのではないでしょうか。私自身は、多くの課題を抱える社会を支えるために、できることを柔軟にくみ取っていける建築家であり続けたいと思っています」
- 秋山怜史
あきやま・さとし 1981年、茨城県生まれ。
2005年、東京都立大学工学部建築学科卒業。
08年、秋山立花設立。横浜国立大学非常勤講師(14~18年)
神奈川県地方創生推進会議委員(15~16年)
京都市ソーシャルイノベーション研究所フェロー(18年~)
長野県立大学ソーシャル・イノベーション創出センターアドバイザリー・メンバー(19年~)
NPO法人全国ひとり親居住支援機構代表理事(19年~)
東洋大学非常勤講師(20年~)
- 一級建築士事務所 秋山立花
所在地/横浜市中区相生町3-60 泰生ビル3階
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