“都市”と“地方”の“働く”と“暮らす”。 このすべてをオモシロく変えていく――。 主体的に生きる人を増やすことが使命
「人を軸に据えた場の在り方を発信していきたい」。
そんな代表取締役の高井淳一郎氏の思いにより、2013年に設立されたヒトカラメディア。
「こだわりたかったのは、意志を持って生きる人を増やし、うねりを持った熱源を増幅させていくことです」
ステークホルダーすべてがwinwinになり、その価値や感謝の総量として対価が支払われる仕事を目指しながら、当初は不動産仲介、ビルの空室を埋めるといった多様な案件を受けていた。そのなかで、オフィス移転は自身の起業理念に相通ずる手応えを感じたのだと言う。
「インパクトを与えるには、〝暮らす〞や〝まち〞に影響を与えうる〝働く〞からアプローチすることが重要と考え、徐々にオフィス移転に絞り込み、現在のスタイルを確立していきました」
同社のオフィス移転は、単に機能的な内装の提案をするだけではない。顧客企業の実現したいことを引き出し、場に落とし込んだり、そのプロセスを通じて自分たちのことを考えるきっかけをつくることが目的だ。そのため、ワークショップなどにより社員の起こしたいアクションを引き出し、〝発散〞と〝収束〞を繰り返しながら顧客と一体になって場をつくり出す。
「whyから付き合うのか、whatから始めるのか、howを提供するのか。相手が何を求めているのかしっかり理解したうえで、用いるアプローチを決めています」と高井氏は語る。
要件定義から設計・施工までをワンストップでカバーするため、社内には企画営業から、プランニング、施工管理、ディレクション、施設運営など、様々なチームが存在している。スタッフは役員などを含めて約40名。うち十数名が設計を担当するメンバーだ。
「お客さまの目指す未来を引き出したうえで、それが十分に機能するかたちを提案・提供しています。そのためか、〝ものづくり〞ではなく〝ことづくり〞を好むメンバーが多いです」
現在はオフィス移転業務にとどまらず、鉄道会社が推進する街づくり事業にも参画している。たとえば、京王電鉄が手掛ける下北沢の再開発プロジェクトでは、自らも〝プレイヤー〞となるために本社を下北沢に移転した。
「オフィス移転で働く人々のやりたいことを引き出すことは、街の活性化に変換できる。プレイヤーとアセットをつなぎ合わせて、新しい価値を生み出すという考え方を大切にしています」
同社のすべての取り組みに貫かれているのは〝共創〞という思考だ。共通のテーマやビジョンを持ったコミュニティ同士が動き出すことで、単独では成し得ないことが実現できる。顧客の期待に応えながら、多くのステークホルダーをどんどん巻き込むことで、期待を超えた成果が生まれる可能性が高まるのだという。
共創の考えは、同社が島根県雲南市で手掛けたコワーキングスペースにも反映されている。再生古民家の軒先に設けられたベンチは、自然と近所のお年寄りの語らいの場となり、レンタル可能な屋台やキッチンは、住民が小さな挑戦をするための仕掛けである。個人イベントを開催して成功体験を得た住民が新たなプレイヤーとなれば、点在する空き家の再活用につながるかもしれない。住民との共創を促すために、企画段階でアイデア出しのワークショップを実施するなど、人を巻き込む仕掛けをちりばめている。
「コンテンツのクオリティを追求し過ぎると、一過性の消費で終わり、地元は幸せにはなれません。隙間がたくさんあれば共創の連鎖を生み出せます」
同社がこれまでに手掛けたプロジェクトは、それぞれの都市、地方で大きな効果を生み続けている。しかし、高井氏は急速な業務の拡大には慎重だ。「何事もどっぷりと浸かりたいタイプなので、直近1年半ほどは限られたプロジェクトに狭く、深く、長くかかわっていくつもりです。仕事の相性とタイミングを見極めながら、じわじわと自社を成長させていくイメージです」
- 株式会社ヒトカラメディア代表取締役 高井淳一郎
たかい・じゅんいちろう 2010年、名古屋工業大学建築・デザイン工学科卒業後、
株式会社リンクプレイスにてオフィス仲介・構築、ビル
オーナー向け新規事業開発に携わった後、上場準備中の
ベンチャー保証会社(株式会社日商保)にスタートアッ
プメンバーとして参画。
13年、株式会社ヒトカラメディアを設立し、代表取締役に就任。
- 株式会社ヒトカラメディア
2013年設立。オフィス移転支援を中心に、働く場や働
き方に関するプロジェクト全般の企画・サポートを行う。
各プロジェクトを組織や地域の活性化につながるチャン
スと捉え、人を中心にした場づくりを提供している。所在地/東京都世田谷区北沢2-5-2
下北沢ビッグベンビル 地下1階
TEL/03-6455-1940
https://hitokara.co.jp/