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BIMを中心とした独自のDX推進に注力! 設計業務がより楽しくなる未来をつくる

BIMを中心とした独自のDX推進に注力! 設計業務がより楽しくなる未来をつくる

松田平田設計 DXセンター

BIM導入の課題と社内DXの推進

松田平田設計は、建築業界におけるDXの波に先駆け、BIMセンターを2011年に創設した。当初は設計業務の効率化を目的としたBIM導入に注力していたが、建設業界のDX化と働き方改革の流れに対応するため、21年9月、名称をDXセンター(DXC)に変更し、社内全体のデジタル化に取り組むこととなった。

センター長の小野里匡章氏は、「私が入社した頃は手描き図面の時代で、施主との打ち合わせも月1回ほどで済んでいました。しかし、現在は週に1回の頻度で行われ、検討事項に対する資料作成に追われています。加えて、環境問題などへの対応で建物の基本スペックが複雑化し、関連する申請業務も急増。設計者が設計業務に注力するためにも、社内のDX化が喫緊の課題となりました」と語る。

しかし、最初にBIMを導入した際は、「3次元で図面をつくるソフト」という認識が強く、BIMの〝I〞=情報の部分を活用できずに逆に作業量が増加。また、BIMオペレーターを配置しても、設計者とオペレーターの適切な情報共有と指示が行えず双方が疲弊してしまうという問題も生じていた。

DX環境として仮想デスクトップサービスを導入し、どこにいてもRevitやCGが扱える手描き対応のタブレットを設計者に支給

「これからは設計者もITを駆使できる能力が不可欠です。設計者自身が業務の効率化を実現するため、DXのメリットを広める社内の啓蒙活動と教育が非常に重要だと考えています」

そのため、昨年からは各部署の代表者を集めた「DXC+plus」という新たな枠組みを導入した。この枠組みでは、社内のコンピュータリテラシーを5段階に分類し、参加メンバーをレベル3まで高める教育プログラムを実施するとともに、メンバーがそれぞれ所属する分野で、デジタルによる業務効率化を促進する環境を整備する。

小野里氏は将来的な展望について「パラメトリックデザインやAIなどを活用して、個々の設計者の経験や知識だけでは導き出せない多角的な最適解を提供するなど、新たな付加価値の創造を目指しています」と語る。

DXの最終目的は設計が楽しめること

コンピュータリテラシーのレベル3は、自身の業務を効率化するために様々なツールを活用できる段階を指す。

例えば、ビジュアルプログラミングツールの「Dynamo」を「Revit」と連携させることで、同じ操作が繰り返し必要な解析や作図などの自動化や効率化が可能となる。マンションの各部屋の採光計算やホールの席ごとの眺望の割り出しをわずか数分で完了できるのだ。しかし、ここで重要なのは、単に、それぞれの手順を覚えるのではなく、設計や計算の方法に応じて自分自身でコンピュータを活用できる能力を身につけることである。

また、同社のDXの特徴の一つとして、3Dスキャナーによる点群データの活用も挙げられる。敷地や改修前の建物などのデータとBIMモデルを組み合わせてビジュアル化し、設計条件の確認などに活用するものである。公園の自然環境との共存が求められた板橋区立中央図書館では、既存樹木と建物の関係性をVRで可視化し、計画推進の合意形成に役立てた。

一方で、このような業務には、建築の知識や経験が必要ないものも存在する。現在、設計業務の一端を担っている関連会社において、コンピュータライゼーションによって生じる多様な業務を請け負える体制・仕組みづくりを計画中だ。確認申請書類の作成や省エネ計算、3Dプリンターの出力、点群データの取得などの業務であれば、建築バックグラウンドを持たない人材でも十分に活躍できると考えている。

「DXの最終目標は、設計者が積極的に関与する必要のない業務をネグレクトできる仕組みの構築です。設計士が本当にやりたいと思える業務に集中できる環境をさらに整備していきます」

PROFILE

総合設計室 DXセンター センター長

総合設計室 DXセンター センター長
小野里匡章

おのざと・まさあき/
1991年、日本大学大学院理工学研究科建築学専攻修了後、株式会社松田平田設計に入社。
本社建築設計部を経て、2010年にBIMセンター(現DXセンター)に着任。
設計部時代は、庁舎、スタジアム、クラブハウス、マリーナ、シネコン、研究施設、
橋梁など、多数の設計に携わった。現在はその知見を生かし、
BIMを中心とした社内のDXを推進。
一級建築士。

株式会社松田平田設計

所在地/東京都港区元赤坂1-5-17
https://www.mhs.co.jp/
1931年の創業から90年を超える老舗組織設計事務所。
「後世に残るものづくり」を目指して、オフィス、医療・教育施設、
公共施設、都市計画などの設計監理業務、PM/CM業務、企画開発業務にあたっている。

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