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「答えがないから面白い──」。多様な社会問題を抱えた変化の時代に最適な建築で“解”を

「答えがないから面白い──」。多様な社会問題を抱えた変化の時代に最適な建築で“解”を

みかんぐみ

同社は東京工業大学大学院で机を並べた加茂紀和子氏、曽我部昌史氏、竹内昌義氏の1級建築士と、加茂さんの夫でフランス人建築士マニュエル・タルディッツ氏の4人が共同代表を務める。設立は1995年。別々の事務所などで働いていた4人が、合同でNHK長野放送会館の設計コンペに応募、見事最優秀賞を射止めたが、「法人でないと契約は無理と言われた(笑)」のがきっかけだ。

「コンペでは大きな事務所が発想しないことをやるしかないと考えて、建物を丸ごと地下に埋める案を出しました。建蔽率が問題にならないので、部屋や施設を全部ワンフロアに収めることができたのです。20年近くたった今でも、『私たちでないとできないことでなかったら存在意義はない』というその時の思いは変わりません」と語る。

文化施設や教育施設、集合住宅、個人住宅など、幅広い建築物の設計を請け負う同社だが、「同業に比べると、イベント系、博覧会系の依頼がかなり多い」のだという。
「2005年の愛・地球博のトヨタグループ館、大型仮設ライブハウスSHIBUYA-AXなどで実績を重ねるうちに、イベントを仕切る広告代理店の間で、多少ややこしい案件でも、みかんぐみに持っていけば何とかなる、という話が広まったようです(笑)」

「私たちは代表4人がフラットなスタンスで情報を共有し、お互いに活発な意見交換をしながら仕事を進めます。そういう経験や組織のあり方が、多様性のある広告代理店の要求に対応するうえでプラスに働いているのだと思いますよ」と続ける。

そんな同社の仕事ぶりを象徴する建築物を、二つ紹介しよう。

そんな同社の仕事ぶりを象徴する建築物を、二つ紹介しよう。

そんな同社の仕事ぶりを象徴する建築物を、二つ紹介しよう。

まずは、09年に竣工した、教育施設としては同社初の伊那東小学校(長野県)。
「古い校舎を順次立て替えていくプロジェクトだったのですが、先生方と話していて知ったのが、従来のように1年生と6年生の教室が同じ規格では不都合が多いということでした。さりとて間仕切りをなくすといった一見理想的なものにしても、うまく使いこなせていない現実もある。建物というのは、あくまでもその目的や外の環境にマッチしたものであるべきだと考え、最終的には教室を学年ごとにバラバラの形態にしたのです」

もう一つが東京の新名所「マーチエキュート神田万世橋」だ。こちらは「できるだけ手をつけない」をコンセプトに設計した商業施設である。
「現場を見に行った時に感じたのが、レンガ造りの高架橋はこのまま残すべき、ということ。この空間を使ってこれをやってやろうという建築家としての本能を抑さえるのは苦しいけれど(笑)、残すために何をやるのかを第一に考えました」と振り返る。同社がかかわったことで、明治の遺産は保護され、蘇ることができた。

海外案件の受注経験もある同社だが、「依頼があれば受ける」というスタンス。
「今までの設計事務所の業態を維持しようとするから、生き残るために是が非でも海外に、という話になるのではないでしょうか。今の万世橋のようなリノベーションもそうですが、私たちは直面する社会の状況に答えを出したいという思いで仕事をしています。建築家という立場は同じでも、日本社会が変われば、答えの出し方も変わっていくはず。やるべきことは山ほどありますよ」と語る。

最後に「例えば地方の疲弊は政治の問題だけれど、役場や学校、老人施設をどうするかなど、建築のレベルで貢献できることもあるはずです。社会に対して建築がどんな答えを出せるのかを、常に意識していきたいですね」と思いを述べてくれた。

PROFILE

株式会社 みかんぐみ

株式会社 みかんぐみ

所在地/横浜市中区太田町6-75関内北原不動産ビル4階
TEL/045-650-5307

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加茂紀和子、曽我部昌史、竹内昌義、マニュエル・タルディッツらが

1995年NHK長野放送会館の設計を機にみかんぐみを共同設立。

神奈川建築コンクール住宅部門優秀賞(大井松田の家=09年)、

子ども環境学会デザイン奨励賞(伊那東小学校=11年)、

横浜市建築局優良建築設計者表彰最優秀賞(あかね台中学校=11年)、

BELCA賞ベストリフォーム部門(マルヤガーデンズ=13年)など、

数多くの受賞歴がある。

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