プランニングとエンジニアリング、そしてデザインを融合させた、“ひらめき”を生む研究所づくり
PLANUS
「研究所の設計では、蓄積した情報量も提供できる仕事の深さも、他社の追随を許さない自信があります」
こう語る林正剛氏は米国の美大でグラフィックデザインを学び、広告制作会社勤務を経て、父の経営する研究設備機器メーカーに入ったという経歴の持ち主。プラナス株式会社の経営権を取得し、独立したのは2005年のことだ。
「父の会社で米国の研究設備を輸入する仕事に携わるうち、彼我の研究環境のあまりの違いに愕然とした」ことが、「研究施設専門の設計事務所」を立ち上げた動機である。
「欧米の研究所は厳しい競争を勝ち抜くためにいかに優秀な人材を世界から集めるか、といったコンセプトでつくられていて、実際リビングのように居心地がいい。ひるがえって日本の研究所は、どこもかしこも真っ白な空間に薬品棚や実験台や機器類が所狭しと並んでいるのが実情です。これでは人材は集まらないし、そこで本当の〝ひらめき〞を生むのも難しい」
そうなっているのは「海外では当たり前の研究所設計の専門家がおらず、建築士が研究の中身やそこで求められているものを知らずに、ただ〝器〞をつくってきたから」だと林氏は言う。
「家を建てる時のことを考えてみてください。建築士は施主の家族構成や趣味趣向、将来の生活設計などを聞き、それらをイメージしながら設計していくでしょう。しかし研究所となると、〝よくわからない〞から内部はただでさえ忙しい研究者に丸投げ。これでは理想的な研究空間など、望むべくもありません」
同社が他社と一線を画する設計思想が「インサイドアウト」、すなわち「内から外へ」つくりこんでいく、という考え方だ。
「住宅と同じで研究所にも部屋ごとに役割があります。この研究室では何をやるのか、そこで必要になる機材は何で、効率的に稼働させるために必要な広さはどれくらいか。そうしたことを徹底的に調べ、実験台一つから細かく図面を書いていくのが僕らのやり方です。それをやってこそ、研究に最適の〝器〞ができるんですよ」
- 手がける研究所には、独創的な成果を生むための仕かけも、ふんだんに盛り込まれる。
- 手がける研究所には、独創的な成果を生むための仕かけも、ふんだんに盛り込まれる。
手がける研究所には、独創的な成果を生むための仕かけも、ふんだんに盛り込まれる。
「例えば〝5分間の法則〞といって、研究者はラボから5分以上かかるところには行きたがらない。でも時々はラボの外にも出てほかの研究者とどんどん言葉を交わしたりできるような環境じゃないと、なかなかセレンディピティ(偶然の発見)なんて生まれないと思うのです。これは〝赤提灯の法則〞というのですが(笑)、人間は光に吸い寄せられる習性があるんですね。だから照明計画で、わざと遠くまで歩きたくなるような工夫をしたりもしています」
現在、同社は18名の陣容。林氏自身はクリエイティブディレクターとして全体を率いる。メンバーのうち13名は1級建築士で、そのほか博士号を持つサイエンティストやプロダクトデザイナー、インテリアデザイナーなどが〝束になって〞仕事を前に進めていく。どんな研究所にすべきか、基本構想からかかわり、課題を鮮明にして、ゴールの設定まで主体となって提案する。プラナスの専門性は、こうしたユニークな体制と100件を超える実績に裏打ちされたものなのである。
そんな同社は、関西と九州に拠点づくりを考えていることもあり、意欲的な人材を募集中だ。「僕自身そうだったのですが、建築家もいろんな〝寄り道〞をしたほうが、新たな発見に出会えるのでは。うちはちょっとほかの事務所とは毛色が違うかもしれないけれど(笑)、自由だしクリエイティブな仕事ができるし、楽しいと思いますよ」
- 林 正剛
1972年、大阪府生まれ。
97年、アメリカンインターナショナルユニバーシティ・グラフィックデザイン科卒業。
広告制作会社、研究設備機器メーカーを経て、
米国の研究所建築家、ケン・コーンバーグ氏に師事。
これまでに100件以上の研究・開発施設の立ち上げに携わっている。
- プラナス株式会社
所在地/東京都千代田区神田錦町3-23 西本興産錦町ビル
TEL/03-5282-8611
http://www.planus.co.jp/
1990年設立。2005年、林正剛氏が経営権を取得し、新たなメンバーとともにメーカー、大学などの研究施設専門の設計事務所としてスタートした。
プランニング、エンジニアリング、デザインという3つの手法によって、
研究者にとって最適な研究・開発施設を実現する。
基本構想、設計、監理はもちろん、CI・VIデザイン、家具設計などのサービスをワンストップで提供。
現在までに100件超の実績がある。